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一言メモ
寒冷前線コンダクター 富士見二丁目交響楽団シリーズ1
うな
BLもハーレクインの時代か……
寒冷前線コンダクター 富士見二丁目交響楽団シリーズ1 うな
寒冷前線コンダクター (角川ルビー文庫―富士見二丁目交響楽団シリーズ)
秋月 こお
角川書店
なんかいつの間にか大人気になってたシリーズの一巻。
富士見二丁目交響楽団という小さな町の楽団で、それなりに苦悩したり青春したりしていたノンケの主人公。
ある日、楽団に入ってきた長髪美形金持ち天才指揮者にコンプレックスを抱いていると、そいつの家に呼ばれる。そしたら天才はなにかを勘違いしていて、主人公をレイプしてしまうのでした★
読んだのははるか昔なんですが、一読して「そうかあ、やおいもレディコミになったかあ」としみじみしてしまった。
凡庸な主人公が、ある日突然、ちょいワルのイケメンによって強引に操を奪われ、でもおかげで才能も花開いたし、相手は実は金持ちだし、結局相思相愛になってめでたしめでたしなのだ、という、まさしく凡百のシンデレラストーリーそのまんま。
じゃあ作品としてどこが他より優れているのかというと、エロシーン。
ワーグナーのタンホイザーをかけながら強引に姦られるという、そのシーンのインパクトだけで読者の気持ちをかっさらっていったという、本当にそれだけの作品。これをレディコミと云わずしてなにをレディコミというのか?
まあ、文章も下手ではないし、細々とした所帯じみた場所の描写が妙に上手かったりと長所もあるのだが、すべてはエロシーンのおまけのようなもの。
そういう意味ではやおいの需要を端的に満たしてはいるのだろうが、やはり「素敵な旦那様ができたから幸せ♪」というだけの話を、わざわざ男×男で読みたいとは思わない。だっておれは男でノンケだし。
自分が一部のやおい・JUNE作品に惹かれたのは、そこにあるはぐれ者の精神、負け犬の心、精神的な破壊と再生の物語、であるからで、レディコミやハーレクインを求めてはいないのでした。
しかし、結局このシリーズは一時期のBLを代表する大ヒット作品になったわけで、結局、大多数の女性にとって必要なのはシンデレラストーリーなのだな、としみじみしてしまう。