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上原 隆

タイトル評価一言メモ
喜びは悲しみのあとにうなぎノンフィクション・ルポ。負け犬インタビューいいね
雨にぬれてもうなちょっと飽きてきた





  喜びは悲しみのあとに  うなぎ

喜びは悲しみのあとに
上原 隆
幻冬舎





ノンフィクション・ルポルタージュ・コラム、とか云えばいいの?
作者が有名無名を問わず、市井の人々にインタビューを行い、それを基に小説っぽく仕上げている作品。

作者の訪れた人々はさまざまで、障害をもつ息子を無くした作家、戦力外通告をされたプロ野球選手、人形変身願望の男、キャッチセールスマン、実演販売業者、元いじめられっこ、などなどなど……
人生の辛酸をなめたかれらの姿を、同情するでもなく憐れむでもなく称えるでもなく、いたって静かにただただ描写している作者の視線が、ここちよい。

人生にはいたるところに落とし穴があり、世界にはさまざまな底辺がある。
だがそれは底辺ではなく、自分とは別の、しかし生きた人間の住まうフィールドに過ぎず、人はただ、人として生きていくしかないのだな、とそう考えさせられる作品。

傑作と呼べるような粒の大きい作品ではないが、一遍は短いので、ふとしたときになにげなくページを開くとよい作品だろう。
みんな、生きているのだなあ。
たまには普通のいい話も読みますよ? ぼくは。






  雨にぬれても  うな  

雨にぬれても (幻冬舎アウトロー文庫)
上原 隆
幻冬舎





ノンフィクション・コラムの第三弾。
たった二人の会社経営で、社長に自殺された社員。
恋愛することなく五十まで生きてきて、エジプト人の彼に貢ぐ女性。
仕事と家族を捨ててお笑い芸人を目指す四十二歳。
などなど、様々な厳しい状況にある人にインタビューし、彼らの姿をそのままに描いた作品。

以前の二作もそうではあったが、今作はさらにオチがなく、まさに普通の人々におとずれる普通の危機を、ただのそのままに淡々と描いている。
筆者の視点は共感に満ちているが、しかし彼らに手を差し伸べるわけでもなく、義憤にかられるわけでもなく、熱くはないがクールではない視点は健在。それが独特の余韻を残している。
が、あまりにもオチがなさすぎて、個人的には前二作の方が好み。
とはいえ、ノンフィクションコラムとしては異色であり傑出した存在。

(07/12/5)







    










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