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歌野昌午

タイトル評価一言メモ
生存者、一名うな宗教はうざい
ジェシカの駆け抜けた七年間についてうなうまいのか?
うな





  生存者、一名  うな

生存者、一名 (祥伝社文庫)
歌野 晶午
祥伝社





中篇ミステリー。

あるカルト宗教の信者四人が爆弾テロを敢行。
四人は上層部の指示に従い、幹部とともに無人島へ逃亡。
そこで本格的な逃亡の準備が整うまで身を隠すはずだったのだが、翌日、幹部は船とともに島から姿を消していた……

まさしくオウムを思わせるカルト宗教の信徒たちによるサバイバル。
全員、カルト信者なので基本的に気持ち悪くて、もう本当にイヤ。
作品の出来としては、実によくできた小品。
設定とタイトル、オープニングで話がつかみやすく、話の展開速度は適度で、登場人物も前述の通りいやな感じでわかりやすく、伏線は丁寧で、オチは良い意味で曖昧であり、と、たしかな技量に裏打ちされた佳作。
良い。

(06/12/8)







  ジェシカの駆け抜けた七年間について  うな

ジェシカが駆け抜けた七年間について (角川文庫)
歌野 晶午
角川グループパブリッシング





長編ミステリー。

アメリカのクラブチームに所属するエチオピア出身のランナー、ジェシカ・エドラ。
彼女は夜のジョギングをしている時、チームメイトのアユミ・ハラダが奇妙な儀式を行っているのを発見してしまう。
それをきっかけに、アユミがカントクを恨んでいることを知るジェシカ。彼女はカントクによって選手生命を絶たれていたのだ。
彼女がなにもできぬままでいるうちに、アユミは失意のうちにチームを脱退、やがて自殺をしてしまう。
ジェシカがアユミ・ハラダのためにできることは、もう一つしかなかった……

ネタバレするから、そこんとこよろしくね。
タイトルといい、時期といい、前作の『葉桜の季節にきみを想うということ』が予想外に受けたので、大急ぎで作ってみました、みたいな節がある。
もちろん、トリックにはだまされた。
騙すという意味では、非常に優れたミステリー作家だと思う。
けどなんだろう、この釈然としない感?



ありていにいうと、西暦だけで生きている日本人の常識を利用した作品で、だから主人公はジェシカでなくてはいけないという必然があるのだが、やっぱりこのだましは釈然としない。
なんで釈然としないんだろうと考えたが、地の文でだまされているからだ。
西暦2004年がエチオピアの数え方だと1997年にあたる、というところがメイントリックにあたるわけだけど、地の文が三人称で、そこで2004年、1997年、という表記が両方使われているので、どうにもずるいのだ。確かに、よくみれば「西暦」とはかかれていなかったけども。
会話文なり、一人称なりで書かれた文ならば、ジェシカにとっての暦と読者にとっての暦がずれていても問題ない、むしろ見事な引っ掛けだと思うが、地の文でだますというのはどうなんだろう?

しかし、こういった釈然としない感じは歌野作品ではよくあることで、ではこの作品で強くそう思ってしまうのはなぜか、ということを考えると、やはり一つの物語としての弱さだと思う。
単純に、ミステリー抜きで物語として読んだときに、面白くない。
たしかに、女子マラソン界のことをよく調べられているし、説明も悪くない。だが、章ごとに視点があちらこちらに飛ぶから(騙すために)、なにがなにやらわからぬ、むしろどうでもいい内に事件が解決してしまう。
情景にも美しい部分はなく、どうにも面白くない。元々キャラクターに魅力のない人なので(本人も自覚している節がある)物語に魅力がないと、なにも面白くなくなってしまう。

よくできているし読みやすいけど面白くない、これは昔からの歌野作品の欠点だと思う。

(08/2/22)







  タイトル










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