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馳星周

タイトル評価一言メモ
うなマゾい





  M  うな

M(エム) (文春文庫)
馳 星周
文藝春秋





エロスな感じの短編集。


★『眩暈』
義妹に最近色気があってドキドキ。みたいな話。
だんだん正気を逸していく主人公の描写はいい。
妙なリアリティがある。妙じゃないのか?


★『人形』
あたし大学三年生。隣の家のおじさんに激ラブなの。
偶然電車で会ったおじさんをストーキングしてみたら、売春クラブに入ってっちゃって……
みたいな話ですが、いやあ、重いというかグロイというか。
ぐったり。ぐったりですね。
色んなしがらみから脱するために、すべて忘れて性の人形になりたいっていう、それだけの気持ちを描写するのにもうぐったり。救いがまったくないし。


★『声』
旦那はクビになってNEET生活。息子はいじめられているみたい。
自分は仕方なく売春して生計をたててるんだけど、うっかりヤクザに捕まって、写真撮られて調教されて搾取されちゃうの。みたいな、もう、うんざり。

これキッツイなあ。キッツイですよ。
なんかもう、全方位的にキツイ。
勘弁してください。


★『M』
マザコン転じて父殺しの青年が、色々あってSMクラブで変な子にはまるんだけど、やっぱり報われない、みたいな。
やたらと主人公の渇望というか、乾いた感じ、満たされない感じ、そういうのが伝わってきて、息苦しいです。
全編通してそうなんだが、そりゃ性愛に関する渇望は、どこまでいっても満たされないし、それが精神からくるものならなおさらで、しかしそれでも肉体に頼らなくてはいけないのが、人間の、若さの、哀しさですよねえ。
みたいなみたいなみたいな。

ただまあ、どれもこれもカッコよすぎるんだよなあ。
そりゃノワールの旗手・馳先生ですから、
こういうなんか勘違いされるくらいのカッコよさが売れてる理由なんだろうけど、 なにもこんなにカッコよくなくてもいいじゃない。とか思う。
まあ、カッコよくて、それを否定されるのも心外かも知れないが。でもなあ。

オチはないけど、現代的な性愛の息苦しさを楽しむならいい作品群です。
個人的には厳しかった。出来の問題じゃなくて精神的にしんどい。
あんまりこの作品の出来とか評価できないな、おれは。

(06/5/18)










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