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平山夢明

タイトル評価一言メモ
東京伝説 呪われた街の怖い話うな実話体験集。性格の悪い作者
怖い人1うな実話体験集。ストーカー多すぎ。
怖い本2うな実話体験集。心霊物にしてはそこそこ
いま、殺りにゆきますうな実話体験集。タイトルが出オチ
つきあってはいけないうな実話体験集。無理のあるお約束。
「超」怖い話Б霊話は飽きた
ミサイルマンうな汚いなさすが夢明きたない





  東京伝説 呪われた街の怖い話  うな

東京伝説―呪われた街の怖い話 (ハルキ文庫)
平山 夢明
角川春樹事務所





実話をもとにしたサイコ系怪談を四十八話集めたもの。

実話系ホラー編者の雄として、地味に膨大な量の著作を発表していた平山夢明が、近年ミステリー・創作ホラーの方面でも高く評価されているという。
じゃあ、ひとつちゃんと読んでみようかな、と探してみるも、見つかるのは実話系の著作ばかり。しかしまあ、実話系でも作者の力量はわかるだろう、と思い購入。

……いや、こいつ性格悪いわ、ホント。ホラー作家に対する最高の賛辞ですけどね、これ。
本書は著者が集めた実話をベースにしているため、インタビューのような形式をとっている作品が多い。よって、地の文は他人事で淡々としているのだが、それが都市伝説特有のクールな恐怖を駆り立てている。
話の内容自体がまず面白いというのはある。が、ここに収録されている話のいくつかは(あるいは半数は)、都市伝説系のサイトを回っている人なら知っているようなもので、現におれも「あ、これ知ってる」という話がいくつもあった。
にも関わらず、同じ話でもここに載っている文章の方が、断然面白い。

ありていにいって、ネットに載っているホラー系の話は、話自体は面白くても、あっさりと書きすぎてたり、説明が下手で状況が良くわからなかったり、変に怖がらせようとして滑ってたりで、情報としてみたときには有用でも、作品としてはとても評価できないものが多い。というかそういうのがほとんどだ。
それらに比べて、平山氏の書き方が優れているというのは確かだ。しかし、どう優れているのか、というのは説明が難しい。
前述したように、淡々と書かれているので、ほかの創作系ホラー作家のように情景描写や心理描写、人物への感情移入を利用しての恐怖ではない。一話のページ数も3〜6Pなので、伏線などの構成が巧妙ともいいがたい。無論キャラクターの魅力などはまったく関係がなく、作者自身に興味がいく書き方でもない。
しかし、明らかに素人の文章とは一線も二線も画している。

で、結局思ったのが「こいつ性格悪い」なわけだ。
どうすれば相手がいやがるか、同じ話をどう仕上げればいやな気持ちになるか、それについて常に思索し、実践し続けている。そういう人間の書く文章だよ、これは。
口で語ること、文で読ませること、映像で見せること、同じ話で同じように恐怖させようとしても、そこで必要な見せ方はまるでちがってくる。語り独特の間を文章に取り入れようとすれば冗長で退屈になりがちだし、映像のような一瞬のインパクトや雰囲気づくりを再現しようとすると、滑ったり鬱陶しくなったりする。
この本の怖さ、嫌さは文章で読んだとき独特のものだ。話のぶつ切りの仕方、あいまいな表現、わずか一、二行の情報で厚みを増すリアリティーのつけ方、ところどころに散見される黒い笑い、すべて文章だからこそ出せるもの、それをいたって自然にやっている。

天性のホラー作家、というのは、こういう人を云うのだろう。とにかく、性格が悪い。
ここに独自のイマジネーションが加わるというのなら、そりゃあ創作ホラーでも評価されるだろうさ。世の中の見方と、人に対する話の見せ方が、すでに一歩も二歩も先を行っている。

実話系のホラー作品としては、無難かつ上出来なんじゃないかな。
とにかく、創作系の話もちゃんと読んでみようと思った。

(08/2/3)







  怖い人1  うな

怖い人 1 (1) (ハルキ・ホラー文庫 ひ 1-13)
平山 夢明
角川春樹事務所





実話恐怖体験集。短いのがたくさん。

決してつまらなくはないんだけど、オチのつけ方が似たようなのばかりで飽きるなー。
自傷系の危ない人が多いけど、自傷の仕方にも色々あるんだなあ、と感心した。
面白いのはおばちゃん系かな。
「風水的によくないからあなたの部屋の姿見を捨てて」と、ありもしない姿見を捨てることを強要するおばちゃんの話が面白かった。「思い出?思い出なの?」という強引な語り口がまたバカッぽおばちゃんらしく危ない感じで。
あとはなにげなく募金したら「値段分守る」とかいってストーキングされる話とか。

まあ、実話ホラー好きなら。

(08/5/12)







  怖い本2  うな

怖い本〈2〉 (ハルキ文庫)
平山 夢明
角川春樹事務所





実話ホラー体験集。
心霊現象のやつ。心霊物にしてはまあまあだった。

ドアの下の隙間から足だけが見えるが、ドアを開けても誰もいない。なんとなく靴下を与えたらとり憑かれた「不思議な足」が面白かった。むしろ足に萌えた。
修理してた遺体に助けられた「ベトナム・チーム」や、祝い事があるたびに出てる巨大ナメクジ「なめくじ」も面白かったな。

実話ホラーだから基本的には似たようなオチの話ばかりだが「そういう切り口があったか」とハッとさせられるものも多いし、情景もなかなか魅力的。同じようなものでも、どう料理するか、だよなあ。

(08/5/12)







  いま、殺りにゆきます  うな

いま、殺りにゆきます (英知文庫)
平山 夢明
英知出版





実話ホラー体験集。
心霊系じゃなくてサイコ系のばっか。

タイトルが出オチ。もはやその一言に尽きる。
基本的に理由なき悪意や理不尽な暴力ネタばかりだった。面白いっちゃ面白いんだが食傷気味。
「セメントいきます」とか「きりとる線」とかタイトルは面白いんですが。むしろそれだけで読ませている気もする。
この中では、むしろモツの串打ちの劣悪な労働環境を語った「モツ」が一番ぞっとした。そして笑った。
基本的に怖がらせたいのか笑わせたいのかわからない作者のスタンスが、悪意的でホラーに合っているんだろうなあ。

(08/5/12)







  つきあってはいけない  うな

つきあってはいけない (ハルキ・ホラー文庫)
平山 夢明
角川春樹事務所





実話ホラー体験集。

ストーカーの話ばっかり。
各話の最後にかならず「つきあってはいけない」と書いてあるんだが、かなり無茶があるお約束だなあ。
とにかく自分の命を粗末にするストーカーが多くてねえ。でもストーカーって他人の迷惑より自分の欲求が先に立つ自分大好き人間だと思っているから、そんな簡単に自分の命を投げ出せるストーカーが多いってのは、どうも違和感があって。

怖いというより、痛い、キモイ話が多くて、ちと気持ち悪かった。
中でも、ナンパした男の頭から伸びている糸くずをひっぱったら大変なことになった「糸」がちょっと生理的にキタ。
つか、これ語り手は被害者じゃなくて加害者だろ、このビッチ。

(08/5/15)







  「超」怖い話Б  う

「超」怖い話Б(ヴェー) (竹書房文庫)
平山 夢明,加藤 一
竹書房





実話体験集。
あんま怖くなかったし、なんか文章が荒れてて読みにくいのが多かった。
樹海に泊り込んでたら、相方がいつの間にかスルメみたいなものをくっちゃくっちゃしてたという話「干瓢」はちょっと面白かった。
基本的にあまりにも呆気ないので読んだ端から忘れてしまう。
霊の話はやっぱりどうでもいい感じがしちゃうなー。

(08/10/25)







  ミサイルマン  うな

ミサイルマン―平山夢明短編集
平山 夢明
光文社




ホラーだかSFだかの短編集

★『テロルの創世』
小さな町で、両親とともに穏やかに暮らす少年少女。
だが、ある日、軍人たちが訪れて、彼らに衝撃的な事実を告げる。
彼らはみなクローンであり、オリジナルのパーツを補うための予備なのだという……

超難産だった、と冒頭に書いてあっただけあって、ぐちゃぐちゃして読みにくかった。いろい詰め込みすぎ。短編のネタじゃないし、終わらせ方もそうだし。書き手に余裕がないから辛かった。
ストーリー自体は面白いと思うから、もったいない。
(08/1/17)
アンソロジー『少年の時間』の再録なので感想はそこから。

★『Necksucker Blues』
幼い頃の虐待でとんでもなくぶさいくな主人公の前にあらわれたのは、ぶさいくの血を吸うのが大好きな女だった。
彼女の興味を得るため、自分の血をよりうまくしようとするのだが……

血を美味くする方法がきもちわりい。
Gを生で貪り食うとか、意味わからないからやめて!


★『けだもの』
狼人間の父から、普通の人間として生まれた普通に暮らしていた主人公。
しかしある日、子供が何者かに惨殺され、彼は父に復讐を依頼することに……

べつに難しい設定でもないのに理解するのに時間がかかった。
なんでこんなわかりにくい書き方するんだか。


★『枷』
死にたがってた主人公♂は、ある日ハードレイプされたあと人を殺した時に、人知を超えた謎の力が「顕現」するのを目撃し、その現象にとりつかれ……

また設定を理解するのに妙に時間がかかった。別に難しい話でもないのに。
なぜか二人称(あなた)で書かれているが、それもまったく意味がなく、どうにも企画倒れの感があった。
顕現させる描写はえげつなくて見所だったが、ちょっとスプラッタ趣味すぎてついていけない。


★『それでもお前はおれのハニー』
飲んだくれのおれを拾ってくれた娼婦は、息子を死なせてしまったことを後悔していて……

話自体はべつに普通のちょっといい話といえなくもないんだが、主人公が意味もなく醜悪だし、意味もなくやたらとスカトロだし、なんで主人公が拾われたのかの説明はまったくないし、なんか理不尽だった。
下品にしなきゃいけないという使命に駆られているんだろうか、この人は。


★『或る彼岸の接近』
激安の住居に転居することにした主人公一家。
激安の理由は庭の片隅にある朽ち果てた謎の墓なのだが……

意外にもクトゥルーものだった。
いつもの呪文を「ウングルイ ムグウルナフ フタグン」を

ん狂い……朽ちぅ取るぅ家うが殴るふた軍……

と表記するのは、独特だし著者らしいので面白かった。
が、ストーリー自体はタクシー運転手の鬱屈した感じ以外は平凡だった。


★『ミサイルマン』
街で知り合った変な青年シゲといつの間にか快楽殺人に興じている主人公だったが……

作者がいろんな職を転々としたからなのか、自販機のルートサービスや詐欺まがいの販売方法についてはやたらとリアルに書かれているし、その鬱屈は伝わってくるのだが、ストーリー自体はなんか意味不明っつうか、主人公がよくわからん。この作者はこの作品でなにを伝えたいのか?
妙に作者の思い入れは伝わるだけに、この作者は普通に危ないんじゃないかという気持ちだけが募った。


全体的に、書き口がこちらの生理的嫌悪を刺激するようになっているのはうまいが、説明が下手なのか、やたらとわかりにくく読みにくい。
また、嫌悪も怖いというのとはまた違うし、一言でいうなら「きたねぇ」
本当にもう、スカトロを中心として、汚い描写や言動に力をいれすぎていて辟易とする。
マルキ・ド・サドの『ソドムの百二十日』を読んだとき、リアリティのないエロ願望と、やたら力の入ったスカトロ嗜好に、作品としてはともかく作者が本当にやばい人だというのは伝わったが、平山夢明はどうもサドと同じ人種だなー。
無駄にホモで無意味にスカトロ。
シリアルキラーについて調べるうちにそうなったんだか、単にそういう人だからスカトロホモなシリアルキラーに惹かれたのか転々

ホモ分とスカトロ分が薄ければ上質のホラーとして読めるんだが、どうにもそれらのせいで怖いというより汚いと感じてしまう。とりあえずスカトロは控えめにしよう。できたらホモも。

(09/1/18)










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