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劇団ひとり

タイトル評価一言メモ
陰日向に咲くうな∈(゚◎゚)∋意外にも普通にいい話





  陰日向に咲く  うな∈(゚◎゚)∋

陰日向に咲く (幻冬舎文庫)
劇団ひとり
幻冬舎


いま話題の劇団ひとりの処女小説。連作短編小説。
意外なことに、普通に面白い。

サラリーマンだけど、ホームレスや自由に憧れて、ついにホームレスになる男。
まるっきり人気のないC級アイドルのおっかけをする男。
なる気もないカメラマンを目指し、顔だけの男にもてあそばれるフリーター。
ギャンブル地獄借金地獄におちいって、オレオレ詐欺を思いつくダメ男。
才能がまったくなく売れない芸人の、そのダメさに恋する少女。

そんなダメな人間たちのダメさを描写しつつ、最後にあったかいオチをつけて終わる。
云ってみれば、狂気のない松尾スズキのようなノリ(松尾スズキに狂気がなくちゃダメじゃん、とは思うが、この辺がテレビでやっていくかいかないかの違いなんだろうなあ)

正直、最初の二編は「まあ、下手じゃないけどね」と思っていたが、書きなれてきてたのか、三篇目あたりからは普通にうまい。
文章もそうだが、構成や伏線がうまい。プロはだしである。うらやましいくらいだ。
作中のキャラの心理や動作にも、うならされる部分がある。

一編目、出勤途中にホームレスになることを決心して、公園に行くも結局一時間しか間が持たず「おれは自由に憧れていただけで、本当に自由になりたかったわけじゃないんだ」と気づくくだり。
二編目の、C級アイドルの握手会で、客が四人しかいないのに、、アイドルがふりつけで遠くに手をなげかけ、それで客の少なさにきづき、目を泳がせてから、 微妙にしたの方へ軌道修正するくだり。
三編目の、デジカメのメモリーの種類がわからなくて、スティックを買ってきたが入らず、カードのうすさまで削って無理矢理入れたが認識するはずもなく、おまけに抜けなくなり、恥ずかしいから店にもいけず「これは使い捨てカメラなんだ」と自分を納得させるくだり。
四編目、オレオレ詐偽をしようとして電話するも、はなしこんでしまい金の話をできず、「これじゃただのオレオレだよ。詐欺はどこ行ったんだよ」と自分に突っ込むくだり。
五編目の、おならや屁に関することしかネタがない芸人のくだり。

こういう場面が非常によくできている。
反面、ときどき笑わせようとしている部分が目について、ときどき鬱陶しい。
こういう芸人らしさがもっとなりをひそめれば、もっとよくなると思う。
あとまあ、オチがあったかすぎるが、そこは好き好きか。

ともかく「芸能人の本としては」ではなく、普通の小説としてなかなかの出来。
傑作ではないが、定期的にこういうのが書けるなら、一人前の作家かと。
処女作ということも評価して、いちおううな印

(06/4/25)










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