ブギぽシリーズの、あー、第何弾かもうしんねえよ。 シリーズ物になりすぎ。 いままでの見てないと、なに云ってんだかわからんことが多すぎ。 シリーズ物の宿命といえばそうなんだが、元々がもったいぶった話の微妙なつながり具合を楽しませるシリーズなので、あまり読者を置いてけぼりにするのはどうかと。 そういう話なのだからこそ、注意して読者を引っ張らねば。もにゅもにゅ。 さておき、微妙な作品。 筋は悪くない。ボーイミーツガールものとしては、あまりベタベタになりすぎず、しかしそれなりに決まっている。 ことに最後の方の一文 相棒と言うには、やることはまだ何も決まっていない。 友だちと言うには、ちと関係が深すぎる。 恋人と言うには、お互いにまだなにも言い合っていない。 ただ、お互いにそれぞれに代わりとなる人間がいないことは確かだった。 ここはわりと良い。良いが、全体の仲では浮いてしまっている。 あれだ。中盤でしくったな。 無意味に展開が速すぎるし、二人の共犯作業、およびスリム・シェイプの見せる社会の裏に実態がない。 それがないから、二人の成長やお互いにとっての存在価値が伝わってこない。 あと100ページ伸ばして厚みを増やすべきかと。
も、もう……ブギぽ…… シリーズ、えー、十三冊目か? ながっ。ていうか、ながっ。 意表をついて、本筋がちょっぴり進んでいた。 謎の敵<統和機構>の実態が少し見えてきて、システムの中枢、いわば大ボスであるオキシジェンの登場と、わりと少年漫画的にちょっとドキドキした。 が、どうせ当分、システムのことはほっとかれるに決まっているので(そういや、二巻の時点でまったく同じような登場をしたイマジネーターはめっきり放置中ですね)べつに次の展開に期待する気になれないのは、ぼくがもう純粋ではないからですかそうですか。 シリーズものとして見たら、次の展開が気になって良かった。 単発としてみたら、わけわからなすぎでどうかと思った。 執事キャラは基本的に好きなので、伊東谷はよかった。
ライトノベル。長篇シリーズの13作目。 このシリーズは大筋を完結させるのは諦めて、この世界観を使ったスタンドバトル的な小話をつづけることになったのかな? と思っていたのだが、なにやら前巻から本筋が進行しているような感じで、とても意外。 が、その分、単発物としてみた場合、意味がわからないし、オチは「いろいろとつづく」だし、不満はある。 過去の登場人物が登場したり名前だけ出てきたりして、長篇シリーズ的な面白さはあるものの、はっきり云ってあんまりちゃんと覚えていないせいで、混乱すること甚だし。 さらに、一巻で登場して以来、全然でてこなかった「宇宙人みたいなの」が、実にひさしぶりにフィーチャリングされていて驚いた。 だって、一作目の時点は、新人賞受賞作だから、続ける予定なんかなかったため出したもので、二作目以降につづけるために、あれは「なかったこと」にされたと思い込んでたからなあ。 でも、どうやら本筋に関係のある設定みたいで、なんかうっちゃられたままのイマジネイターも出てくるし、なんかこう「あれ?もしかして完結させる気あるとか?」なんて思ってしまった。 全然テキトーにしか把握していないが、いま現在のシリーズの登場人物関係の錯綜ぶりはまさに戦国乱世なみで、もしあの巻の主役この巻の主役がストーリーの端々にきちんと登場し役割を果たし、張りつづけてきた伏線の数々に一応の納得のいくオチをつけて物語を完結させたのなら、これは一大巨編といっていい作品になるだろう。 まあ、無理だろうけど。 でも「もしかしたら」という気持ちにはさせてくれたので、その意味では本巻を評価します。 にしても、いまさら云うのもなんだけど、ネーミングセンスはもうすこしなんとかならんものか。 変な名前ばっかで逆に覚えにくくて、過去作のキャラが混じる混じる。 変な名前って覚えやすそうでいて、「変な名前」という印象で一緒くたになるんだよなあ。
ブギーポップシリーズの、なんかもう何作目か知らん。 つまんなくないし、テンポもいいんだけど、薄っぺらいっちゃ薄っぺらいし、説明不足だし、単品としての評価はどうだろう。 いい加減本編進めろよ、的な。 でもまあ、シリーズ物の一冊としては普通に楽しめた。 それだけといえばそれだけ。 (07/2/10)
ブギーポップシリーズの、何冊目か忘れたけどそんな感じ。 もはやこれは伝統芸能だといわんばかりに、相も変わらず設定をチラ見せして、本筋の大きな話をなにも進めずに、大きな物語の末端で、なにもわからないままに翻弄された若者の話を書いて終わるという、いつものアレ。 時間軸がまた以前に戻っていて、なんと第二巻『VSイマジネーター』の間にあった話らしい。いちいちクロスされてる脇役も話の時間軸もなにもおぼえてねえよw 読んでいる時はいつもの味わいだし、文章のすかすか具合と、ところどころ挿入される抽象的なたとえ話の印象深さと、そのたとえ話の意味がわかったようなわからないような感じで終わるラストの切り方もまたいつも通りで絶妙なのだが、どうにも印象がいつも同じで、本筋がなかなか進まないために、どれがどの話だったのか混ざってしまって困る。 空気を圧縮して戦うツンデレ食いしん坊幼女メロー・イエローは狙いすぎていて、なんかちょっと笑ってしまった。名前がメロー・イエローなのも含めて。最近飲んでないなあ、メローイエロー。 つうかメローイエローは地域で売ってたり売ってなかったりするし、なくなったり復刻したりするので現在も流通しているのかどうかまったくわからないよ…… (09/1/31)
ブギぽ番外編。 あれ、これ上巻だ。完結してないじゃん。ちっ。 あー、少年漫画過ぎ。ここまで少年漫画展開だとちょっと…… ぶっちゃけ、特殊能力合戦なら、ジョジョでもそのフォロワー漫画でもいくらでもあるわけで。いくらでもはないか。 能力バトルだけだと、わりと小説で読みたいとはあんまり思わない。 どうでもいいが、元々この挿絵の人の絵は好きじゃないが、うっかりしてたらなんかとても下手になっている気がしたのでアレだった。 まあ緒方、お前は「はっぴぃ・さるべーじ」でも企画してろ、と 。
ブギポシリーズの番外編的ななんかの三冊目。 期せずして所属組織<統和機構>にも追われるようになってしまったビートは、反統和機構組織<ダイアモンズ>のジィド、独自の動きを見せる朱巳の部下・ラウンダバウトと行動を共にし、謎の存在カーメンを追う。 そこへ<統和機構>の追っ手モータルジムが現れる。 一方そのころ、ダイアモンズは統和機構により崩壊していた。 錯綜として状況に、独自に機構を追う霧間凪、高代亨も加わり、統和機構の合成人間“最強”フォルテッシモや“不死身”カレイドスコープ、さらには“中枢”オキシジェンも独自に動き出し、自体はビートの予測もつかない方向へ動いていくのであった―― という、わりとシリーズの中で適当に散らばらせすぎた設定を一つにまとめるような流れになっている。気がする。 統和機構関係の話を進めるにはブギーポップを登場させないほうがいいと思って始めたのかね、このシリーズ。 しかし、ただでさえすぐに設定忘れて大変なのに、二巻と三巻の間でずいぶんと時間を空けてしまったので、もうなにがなんだかさっぱりですよ。 でも、この巻の終盤、三つ巴四つ巴の様相を呈してきたのは実に僕好みなので、なんとかうまいオチがついているといいけど、多分ついてない。 そこが辛いところだ (07/5/2)
ラノベのアクションっぽいの。 《最強》フォルテッシモに命じられてはじまった、ピート・ビートのカーメンを探す旅はいよいよ最後の局面を迎える。 機構の《中枢》と接触するビート。ビートを追い、亨と旅をする朝子。なにかを求めて戦い続けるフォルテッシモ。 敵対組織ダイアモンズや、《中枢》の側近カレイドスコープ、謎の存在リキ・ティビ・タビを交え、ビートの試練は混迷を極めていくが、朝子との再会が、ついに彼をカーメンへと導く……果たしてカーメンの正体とは? ぜ、全然おわってなーい! 巻末に次作の序章がついてるし、この序章がまたとんでも展開からはじまってるし、えー、このシリーズいつまで続くのー? ブギー・ポップを中心に据えた、従来の一作一事件のスタイルではまったく統和機構も凪のストーリーも進まないと判断したからこその、新主人公によるスピンオフだったんだろうと思うが、ストーリーは進むどころかややこしくなる一方。 次作でちゃんと統和機構と炎の魔女に関するストーリーが一区切りつけばいいんだけど、期待できそうにないにゃー。 連載のせいか文章はいつにもまして薄っぺらく「うう……」とかの手癖も満載ではあるが、ストーリー自体は面白いので、ちゃっちゃっと進行させてください。 でも、新キャラ出すたびに生き延びさせたり別のキャラとなんらかの関係ができたりして、ややこしくなるんだよなあ。モータル・ジムが生き残るとはおもわなんだ。 まあなんだ。最強という設定なのに、戦うたびにあとづけ設定みたいなのでどんどん強くなるのに(なんか空飛べるようになってるし)、秘められたものすごい力とかもあるみたいなのに、なぜかとてつもないヘタレ臭を発揮しているフォルテッシモたんに萌える作品なんじゃないかって気がしてきた。 逆にピート・ビートは主人公なのに、というべきか主人公だから、というべきか、いまいち面白みがないキャラで、出番の減少とともにどうでもいい感じになっていった。 (07/8/14)
ブギーポップシリーズの本編なんだがスピンアウトなんだかわからないシリーズ。 時間軸は『ビートのデシプリン』シリーズの直後 <炎の魔女>の異名で知られる正義の味方女子高生・霧間凪が、統和機構との戦いの中で、その機構すらも恐れるという魔女との間に千年ぶりの「魔女戦争」を引き起こすお話っぽい。 ブギーポップシリーズ一作目から、ほぼ主役のような立場でありながら全然本人のストーリーが進展しなかった霧間凪の物語が、ようやっと開幕された。 これで統和機構との争いにも一段落がつく……と思ったら、敵は新キャラの魔女で、しかしこの魔女が超すごい魔女みたいで、なんか話が予想とは全然違う方向へ踏み出したと思ったら、踏み出した瞬間に一巻が終わった。 ようやっと風呂敷たたむのかと思ったら、余計に広げた時点で一巻終わりとか、もう勘弁してくださいよ。しかも、どうも魔女云々は講談社ノベルスで出てる「事件シリーズ」ともリンクしてる気がするし、いったいどこまで風呂敷が広がる続けるんだ、これは? ストーリー自体はまだぜーんぜん動いてなくて「凪ちょうすごい。ちょう強い」しかやってないので、なんとも云えない。いままでの登場人物がどんどん再登場してきて混乱しているうちに終わったし。 しかしカラー絵はともかく、白黒絵はどんどん劣化してるな…… このやる気のない下着姿の幼女だれだよ……とか素で思った。 (09/2/8)
長編ファンタジー。 デビュー前に書いてた作品だけあって、なんというか、まあ一言でいうと出来が悪い。 一般的に中高生に鉄板で受ける作風にボーイミーツガール物があるが、まあ、それの悪い見本というか。 設定ばかりが先行してたくさんあり、それが羅列されてはいるが、物語に有機的に絡んでいないため、感心するより呆れるのみいうか。 ま、そんなとこで。
SF。連作短編? ナイトウォッチシリーズ第一弾。 シリーズの中ではライトノベル的な、少年漫画的な感じだな。 最強のナイトウォッチ・マバロハーレイ(=スタースクレイパー?)が誕生するまでの物語。 現実がコールドスリーパーの正気を保つためだけにある夢である、という話。 微妙。 悪くはないんだが、これで終わり? みたいな。 こういう現実崩壊的な設定をつくっておきながら、現実からちっとも出る気のない作者はどうか? ちとハッタリが効きすぎか?
SF。連作短編? 虚空牙シリーズ第二弾にして そしてナイトウォッチ三部作の第二弾にして、vsイマジネーターシリーズ第四弾。 悪くない。 この形式は好きだ。 現代世界はコールドスリープの夢であり、管理プログラムと侵入者との争いを、ひそやかな戦場となっている。<br> コールドスリープの外にある月面世界は七つの組織が相争うはげしい戦場。<br> しかしその月面世界すら人類の英知の結晶ナイトウォッチと異星人・虚空牙の戦いからすれば、とるにたらぬくだらない小競り合いに過ぎない。<br> <br> どのレベルのものが現実であり、なにが非現実であるというのか、それを判断することは人には出来ず、ただ多重に重なり合った世界と現象だけが、そこにある。<br> すべてを見透すように、謎の存在<イマジネーター>水乃星透子はただ微笑む。<br> 神林長平の『プリズム』と非常によく似たところのある話だ。 以前から思っていたが、この作者は神林長平を読んでいるんじゃないかな? それとジョジョ(確定) が、しかし『プリズム』よりは落ちるな。 なんか、一見おもわせぶりに書いているけど、その実こまかいことなんてなんも考えていないんじゃねえのか? と思わせるものがある。 エバンゲリオン的というか。まあ、この作者は絶対にエバンゲリオン好きだと思うが。綾波レイ、愛に目覚める、みたいな話、書いてたし。 そもそも、この作者の代表作、ブギ−ポップシリーズ自体がそんなエバン以下略的な、思わせぶり設定見え隠れ路線で売っている。 仮面ライダーの戦いをジョジョ的にしてエバン以下略風味に仕上げてんだよな。 いま、思いつくままに軽く整理してみるか。 まず、謎の存在ブギ−ポップ。 これはある種の状況に反応しあらわれるらしい。世界の調整者といった存在。 が、それが実在する精神体なのか、あるいは主人公の女の子の単なる二重人格なのかは、明らかにされていない。 で、世界各地では、謎の能力者(MPSDだっけな?とにかく、ようはスタンド使い)が、ひそかに発生している。 それを「世界の敵」と認識し、排除しようとしている「統和機構」は、人造人間を社会にもぐりこませ、スタンド使い狩りをしている。 人造人間は社会的地位の高いものも多く、大会社の社長などもいる。また、同時に機構は薬によって人工スタンド使いもつくりだし、これも対スタンド使いに当てている。 スタンド使いはブギ−ポップの排除の対象になることが多いが、かならずしもそうとはかぎらない。 また、機構と敵対することも多いが、これも必ずというわけではない。 正義の味方、凪はそうした思惑とは別に、ただ己の正義感にしたがい機構やスタンド使いと戦っていく。 そうした状況の中で、目的をはっきりとは告げないままにブギ−ポップはあらわれ、謎めいた事を告げると去っていく。 そのブギ−が唯一、最大の敵として認知しているのが、〈イマジネーター〉水乃星透子。 要するに、主な戦いはブギ−vs透子、凪vs統和機構にあるのかな? この四つが同時に絡まり合うのが、ブギ−の本筋か。 が、凪と機構の戦いは本格化せず、凪が事態に対応するだけ。 透子のほうは二作目「VSイマジネーター」において影だけ見せるものの、実体はつかませていない。 同時に、これが問題だが七作目?「エンブリオ侵食、炎上」の時点では、すでにブギ−とイマジネーターの戦いは終わっているらしい。 さらに、ブギ−は透子のやろうとしていたことを崇高なものと思っているらしい。 そのころも統和機構は健在で、凪も相変わらず。 で、ここへ来て虚空牙シリーズのリンクで、イマジネーターがよりわけのわからない存在になっている。 ブギ−の正体とは? その目的とは? イマジネーターはなにを企み、そしてなぜブギ−とぶつかるのか? スタンド使いたちは? 凪は? そうして孕んだ謎をうっちゃったまま、今日もブギ−シリーズは続いていく。 完全に飽きられないうちにやめといて欲しい。
SF長編。 虚人って、筒井康隆かよ。まあ、いいんですがね。 なんかいまいちだった。 虚空牙の謎に迫る、みたいな内容な気もするが相変わらずさっぱりわからん。 宇宙意思だか神様だかそういうものらしい。 だとしたらありがちでげんなり。て、げんなりしないように適当にごまかしてんだろな。 つまりちゃんとは考えていないんだろ。 この人さあ、わりとよく女の主人公の視点で話がすすむことあるけど、それダメね。 どうもうわっつらだけ「女」としているだけで、女にする必然が感じられないし、女になっても文体や心理描写がかわるわけでもない。 ブギーのようにたまにちらっと使う程度ならいいが、メインになればなるほどどうでもよくなる。 まあ、とにかくこれはいまいちだったな。 世界観がはっきりすればするほど魅力がなくなる作品。 すべてをはっきりとはさせないし、ストーリーの終着点も見えない。えば的。 どうしたものか。
戦地調停士EDを主役に据えた、ファンタジーミステリーの第三弾。 意外にも良作。 このシリーズ、ミステリーというのは、あくまでも味付けの問題であって、まじめに推理物として考えれば駄作もいいところ。 なにせミステリーの前提条件である「この世界ではなにが可能でなにが不可能であるのか」というのがまったく提示されていない。 よって、どんなトンデモオチでも許されてしまう。ていうか毎回トンデモオチだ。 しかし、シリーズが進んできたからか、一作目では駆け足にすぎ、二作目ではトンデモ過ぎたそのデタラメさが、いい具合に豪華絢爛さとなっている。 ミステリーとしては論外。あくまでもファンタジーとして見たときに、良作。 ただ、世界設定が、わりと思いつきや、最近に見た、やったアニメ・ゲームに左右されてそうなのが感じられるのはどうかと。厳密に練ってないんだよな、あからさまに。 シリーズ通して見たときに、それを矛盾と取るか、勢いがあってよいと取るか……。 個人的にはこの人には整合性なんて求めちゃいないので、矛盾ぐらいは気にしなーい。
戦地調停士EDシリーズの第四弾。ファンタジーミステリー。 ある一つの特殊な都市を舞台に、時間軸をバラバラに、都市が発生してから起こった幾つかの事件が都市の崩壊へとつながっていく様を、EDの過去と絡めて描いている。 この作者、構成と設定はいいんだけど、文章とストーリーがいまいちなんだな。 そんなわけで、設定と、その都市の発生から崩壊まで、という構成はいい。 ストーリーは……んー、ミステリーとしてみたとき、ちょっとあんまりにもあんまりな気がするな、さすがに。 前作までの設定やキャラクターをおれが忘れているのもなんだかなんですが。 最初は面白そうだったのに、後半に行くにつれてなんだかなあ。 この設定に見合ったストーリーの誕生を求む。
なんかよくわからんジャンルの少し不思議な話。 出版社がちがうからはっきりとは書いていないが、ブギポシリーズと同じ世界、同じ時間軸を持ったある意味外伝的な作品。 ブギーポップに匹敵する謎の現象「ペーパーカット」にまつわる話、みたいなシリーズになるのか? イマジネイターと伊東谷が死んでいるらしいので、時間軸的にはブギポ最新といったところか。 出来としては、まあまあというか、いつも通りといったところ。 設定と構成はよく、ストーリーはやや期待はずれ。 見るものによってちがう姿に映り、人の一番大切なものを奪うことによって魂を盗む「ペーパーカット」の存在は秀逸だが、やっぱりブギーとかぶりすぎ。 ところでアレだな。これ読んでて思ったんだが、この作者の魅力というか、世界観って、クトゥルー神話と相通じる部分があるんだな。 人々の世界では欲が入り混じりながらも、愛したり青春したりしながら必死に生きているのだが、世界の各地に不意にあらわれる絶対的な存在(ブギーポップやイマジネイター、ペイパーカット)に触れた瞬間、自由意思や命は奪われていく。 恐怖からそれに抗おうとする者もいるが、すべての努力は無為に終わり、人間はただ絶対存在の争いに巻き込まれるのみの無力な存在である。という基本前提が、クトゥルーっぽい。そこがいいのかもしれん。
ソウルドロップシリーズの第二弾。 「生命と等価の物」を奪うことによって人の命を奪う怪盗ペーパーカット。 彼を追う保険会社サーカムの調査員、伊佐とその相棒であるロボット刑事千条は、調査の最中、ある私立探偵と関わることになる。 私立探偵は大財閥東澱を出奔した次男坊であり、彼はいま、ある財閥同士の離婚問題に取り組んでいた。しかし、事件は期せずして二十年前の惨劇の真実を暴き出すことになる。 一方、殺し屋のソガは目的に向けて着々と準備を進めていた。 いつもの上遠野節としか。 一癖ある人間たちの群像劇に、なにげなく特殊能力が入ってくるという、いつものアレ。 つうか、ブギーポップシリーズとなにがちがうのかわからん。一部登場人物がかぶってるし。出版社以外みんな同じ。あえて云うなら、いちおうブギーポップシリーズのメインキャラはみんな十代だから、そこがちがうところか? 一般的な社会に暮らしている一般人。 そこから半歩ずれたところにいる金持ちやエリート。 そこからさらに半歩ずれたところにいる特殊能力もちやロボット刑事たち。 それからもさらに半歩ずれたところにいるペーパーカットやブギーポップ。 それぞれの世界は微妙に干渉しあっているが、半歩ずれた世界のことは理解できない。しかし、それぞれの世界には、それぞれの世界を構築する明確なルールが存在している。 要するに、この世界観のずれ。 ずれていながら明確に存在するそれぞれの世界のルール。 これが上遠野作品の根底にある魅力であり、彼の作品をSFたらしめている要因だと思うのだが、実際のところ、彼が評価されているのはセカイ系青春群像劇であったり能力バトルであったりするのだろうなあ。 まあ、それらがエンタメ作品として、重要な要素であることは確かではあるのだが。 ぼくは「律」という言葉が好きで、それは自分を律するの「律」であり、世界の律であるところの「律」だ。 「律」とは世界観であり、例えば「嘘をつくのは全然アリ」という「律」を自分に定めた人間と「基本的にはナシだけど場合によってはアリ」という「律」を定めた人間と「なにがあっても嘘はナシ」と「律」を定めた人間とでは、同じ出来事に出会っても、そこで感じることはまったくちがってしまう。 この感覚の相違こそが世界観であり、それを明確に示唆するのが「律」だと思う。 本を読むということは、ぼくにとっては異なる「律」を知るということだ。 SFに魅かれるのも、SFが往々にして世界の新しい見方、考えたこともなかった「律」を教えてくれるからだ。 ありていにいって上遠野浩平の文章は、読みやすくはあるが決してうまくない。 時々いい表現もあるが、基本的に描写はワンパターンで、慣れてみれば会話も似たようなことばかりを云っている。そして根本的にリアリティと重みに欠けている。 が、その軽さこそが、彼の描く異なる世界の「律」を表現するのにもっとも適しているのだろう。 しかしまあ。 不思議な世界を広げていくのもいいが、ブギーポップにしろこのソウルドロップにしろ、完結することがあるのだろうか? いやまあ、かれが描いているのは世界であり、個々に描かれる群像劇はその端々のこぼれ話程度のもの。であるならば、世界がそうそう終わったりしないように、上遠野浩平の物語も、終わる必要はないのかもしれないが。 でもねえ、つきあいきれないかもって思う瞬間って、あるよ、やっぱり。 いつの間にか何冊も出てるしなあ、このシリーズも。うーむ。 (08/5/15)
ソウルドロップシリーズ第4弾。 「その人間にとって命と同等の価値のあるもの」を盗むことによって相手の命を奪う怪盗ペイパーカット。 今度の予告状は、ガラス細工で幾何学模様をつくる芸術品トポロスになぜか映しだされた。 その直後、トポロスをつくった工芸家の双子の姉が謎の死を遂げ、保険調査員の諸三谷に疑いが向けられるが…… ごめん、なんかそもそもこのシリーズ自体がどういう話なのかつかみどころがないうえに、久しぶりに読んだし(一話完結型とはいえ)三巻を飛ばして読んでたみたいで、しかも話があっちこっちに飛ぶので、よくわからないうちに終わっていた。 伝奇小説ってなってるけど、伝奇なの? ミステリーなの? バトルものなの? なんかよくわからないよ。 設定とキャラは魅力的な気はするんだけど、よくわからないよ。 (09/2/8)
ミステリーっぽい体裁をとったライトノベル。短編集。 なんだろう、マリみてに対抗したのかライトレズ。 憂鬱なる天才不思議病弱少女しづるさんの名推理に酔いしれればいいのかしら?属性多すぎ。 でも、正直この設定は悪くないと思うのよ。 不治の病で入院しているためにアームチェアディテクティブにならざるを得ないという部分や、死を近しいものに感じているから死者の気持ちがわかるのだと部分。 「偉そうにしてないでお前が動けよ」と云いたくなる安楽椅子探偵というポジションを無理なくあてはめている。 まあ、だから設定はいいんだよな、この作者 で、じゃあ内容はというと、ミステリーとしては論外だよね。 ただ、世にも奇妙な物語のようなシリーズだと思えば、悪くない。挿入される童話の存在意義はないような気もするが。 今後、刊行されるのかは知らんが、シリーズとして安定するなら、読んでいきたい感じ。
ラノベミステリー短編集。シリーズ第二弾 一話目。 ある日河原で発見されたミイラ死体。 死者が生きているのが最後に確認されたのは、なんとわずか六時間前。 彼はどうしてミイラになったのか? 二話目。 ブームとなっているカードゲーム。 その起源には、一家惨殺という無惨な事件が絡んでいた。 三話目。 ある商店街でもよおされた、ありふれた仮装イベント。 そこで、一人の男が死体で発見された。 ところが、死の直前、男は同時刻に複数の場所で目撃されていたというのだ。 四話目。 ある日、空から落ちてきたのは、凍りついた一つの死体。 どうやって、かれは凍ったまま空を飛んでいたのか? なぜ落ちてきたのだろうか? このシリーズの基本設定、すなわち不治の病におかされ、病院から一歩も出ることの出来ない探偵役の美少女。彼女の見舞いにたびたびやって来る助手役の少女、という設定は、面白いと思う。 アームチェアディティクティブをする必然がある。 また、あくまで少女たちの戯れであり、事件を解いてどうしようというわけでもないのもいい。 が、肝心の謎解きや推理に関しては、うーん、物足りないというか、せっかくの謎に比して、暴かれる真相というのが、実にどうでもいい。 いや、ミステリーというのは、不可解事件という幻想が、論理によって現実に突き落とされる、失墜の物語であるとは思う。ゆえに、事件が不可解であればあるほど幻想の高みは増し、論理が冷徹であればあるほど、失墜は激しく、その落差こそがカタルシスになっているのだと思う。 この作者の描く不思議な事件は、なかなかいいとは思う。 思うのだが、どうしても物足りない、せっかくの事件がもったいないと思うのは、なにも短編だから、というばかりではあるまい まあ、この作者自身、風呂敷を広げるのは得意だし好きだが、それを畳むのは性じゃないんだろう。 それはそれとして、この本では、二話目がよかった。 架空のカードゲームを創造し、それをプレイしながら由来を探っていく、その形式がなかなか良かった。事件を解いたことが、なんの意味もなさないオチもいい。 そして三話目四話目は、無理が過ぎるんじゃないかと思った。 本格ミステリーではなく、あくまでラノベミステリーであるという分をわきまえた範囲では、悪い作品じゃない。 百合分はどうでもいい感じだが、好きな人は好きなんだから、あって困るものでもあるまい。 (06/6/28)
ラノベミステリー短編集。 まあ、ミステリーというか、不可思議な殺人事件を話のタネに、百合少女二人がいっちゃらいっちゃらするだけなんですが。 今回は童話のお姫様、「白雪姫」「人魚姫」「眠り姫」「かぐや姫」をモチーフに、それぞれを模した殺人事件がおきたわけだが、相変わらず事件そのものは無理があったり唐突に解決したりで、非常にどうでもいいのだが、それぞれの童話の解説や解釈がなかなか面白かった。白雪姫が権力の象徴だとか、アンデルセンがコーラス係をやってて声が出なくなってクビになったとか、全然知らんかったし。 具体的になにがどう、というわけではないんだが、今回は前二巻よりもなんか面白かった。単にぼくがキャラクターに慣れてきただけなんじゃないかという気もするが、童話のお姫様というモチーフが今作の設定に合っていたからだろうか。 ただ、この人の世界観は本筋を隠して脇をばかり書いていくので、いいかげんいらいらする。本筋なんか、ないのかもしれないが。 (07/8/12)
かつて子供だったあなたと少年少女に―― をキャッチコピーに、中高生に売れてる作家たちの新刊を、装丁を豪華にしてすべての漢字にルビをふって「はい、子供向け」ということにして値段をあげて売るという、どう考えても子供狙いというよりは固定ファン狙いのせこい商売にしか思えない「講談社ミステリーランド」というレーベルで発売された本。 本作はタイトルからしてまず「ジョジョかよ!」というツッコミを入れざるを得ないし、内容もまた、どこをどの角度からどのように眺めてもいつものブギーポップシリーズのそれで、文体からストーリーから本当になにひとつ変わっていないし、なによりもブギーポップシリーズの敵である<統和機構>、その中枢である<オキシジェン>を描いた外伝的作品で、つまり子供がこれ単品で買ったらちょっと切なくないか? という作品だった。 あらすじ 小学生の健介が公園でクワガタを追っかけていると異様に存在感のない男がいて、そこにバイクが突っ込んできて死にそうになって、バイクに乗っていたのは、数年前に特撮で小ヒットしたもののいまでは落ち目になった俳優で、存在感のない男は禅問答のようなことをぶつぶつ云って二人に「エンペロイサ金貨」と呼ばれるものを探すように示唆して消えてしまったので、仕方なく探すことになったのでした。 そして色々あってストーリーとは特に関係なくオキシジェンは消滅して中枢は次の世代へと移り変わっていたのでした。 酸素は人間にとって必要だが、毒でもある。 他人は人間にとって必要だが、毒でもある。 この作品にテーマ的なものがあるとすれば、およそこの程度のもので、あとは不可思議な現象・人物に遭遇してしまった普通の人が、ややこしい事件に巻きこまれて、自覚のないうちに世界の運命をちょっとだけ変えるんだけど、その後はなにごともなく普通の生活に戻っていきました、というシリーズいつものアレ。 著書の言葉で「代表作は著作全部」といつも言い張っているのは、かれが描いているのはすべてがつながっている一つの世界で、一冊一冊はその世界の断片に過ぎず、だから全体をもって一つを為した作品である、という意味なのだろう。 今作ではオキシジェンがほんのちょっと働きかけるだけで、世界を都合のいいように動かしているまさしくデウス・エクスそのものであることがわかったが、しかし結局だからそれで物語がどういう風に収拾つくのかはまったくわからない。 シリーズの設定につながらないところでは、売れなくなった元ヒーロー俳優というのはちょっと面白く、かれの出演していた特撮のストーリーとその製作背景が小出しにして語られるのは面白かった。 諸事情により放送が短縮され、終盤の展開が当初の予定と変わり、そのおかげでマニアックな人気を得た、というファーストガンダムみたいな設定のもと、その設定変更による意外な展開、というのがラストまでちょっとした引きになっていて、構成的にはそこが面白かった。 が、その意外な展開自体は別にたいして面白くなかったのが残念。 他人は毒である、というテーマと強引に結びつけたラストは、うまいんだかどうだかよくわからんw 全体的には「いつものブギーポップ」としか云いようがない。 講談社はBOXだのなんだので装丁を豪華にして、固定ファンに少しでも高く買わせようとしている姿勢がどうにも気に食わない。気に食わないがマニアは装丁とか豪華な方が嬉しいのかもしれないし、そこは難しいところだ。 (09/1/14) |