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茅田砂胡

タイトル評価一言メモ
 デルフィニア戦記 1〜4巻うなグインサーガの二番煎じ、開幕
 デルフィニア戦記 5〜8巻うな二番煎じなりの安定感がよし
 デルフィニア戦記 9〜14巻★うな案外無難で小さい話
 デルフィニア戦記 15〜18巻うなシリーズ完結篇。でもなぜかまだ続く。
大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝うな完結してから何年も経ってからこんなキャラ小説書かれても……
スカーレットウイザード 全五巻うなぎ∈(゚◎゚)∋SFラノベの傑作。最高にカッコよすぎる主人公二人
スカーレットウィザード外伝うなつなげるな危険
暁の天使たち 1〜3なぜかはじまるSF学園ドラマ
暁の天使たち 4〜6シリーズ完結。そしてまた続く
暁の天使たち外伝 全二巻どこまでも続くシリーズ。
嘆きのサイレン クラッシュブレイズ1暁の天使たちの続き。どこまでやる気だよ……
スペシャリストの誇り クラッシュブレイズふうな∈(゚◎゚)∋くだらないがニヤニヤしてしまう
ヴェロニカの嵐 クラッシュブレイズ3うなお願いだからルウ様をリストラしてください
クラッシュブレイズうな
桐原家の人々 全四巻うなドタバタホーモコメディ
レディ・ガンナーの冒険お転婆少女の大冒険
レディ・ガンナーの大追跡 上・下うなまた続く大冒険
レディ・ガンナーと宝石泥棒またまた続く大冒険





  デルフィニア戦記 1〜4  うな

放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)
茅田 砂胡
中央公論新社


大長編ファンタジー。
陰謀により国をおわれた若き王ウォルが逃亡中に出会ったのは、おそろしいほどに強い少女だった。
リィと名乗った少女は、自らを事故で異世界よりやってきた<男>だと主張する。
ウォルを気に入ったリィは、国を取り戻すために二人で戦うことになるのだが、それが、戦女神の伝説の始まりだった……

雰囲気はグイン・サーガ中期(陰謀編あたり?)を二回りほど軽くした感じか。
メジャーデビュー作らしいが、なるほど、つたない部分が目立つ。
文章が単調で、肩の力がカクーンと抜けるような硬く、ふ抜けた表現が多発する。
戦いの描写がうまくもなく下手でもないし、陰謀も、まあ妥当なところ。
つまり特筆したところはないのだが、和製ファンタジーとしては適度に手軽で、手堅くまとまっている。

物語は主役二人の魅力によるところが大きいんだが、リィはそこそこ魅力的に書かれているものの、相方の放浪王ウォルがちと物足りない。善良すぎてつまらない。
悪人や無邪気なキャラはかけるが、善人はうまくかけないのだろうか?
とにかく善良になればなるほどつまらないキャラに。

この四巻までで祖国奪回篇としてうまくまとまっている反面、この先の展開にわくわくする気持ちがもてない。
小さくまとまってしまっている感じ。
それでも地力はある作品で、テンポと勢いはあるから、読ませる。

しかし、結果として、グイン・サーガがどれだけ偉大な作品かわかった気がする。
同質の面白さであるからこそ、グインがどれだけ優れていたかをしみじみと思い出してしまった。






  デルフィニア戦記 5〜8  うな

異郷の煌姫〈1〉―デルフィニア戦記 第2部 (中公文庫)
茅田 砂胡
中央公論新社





ファンタジー。
祖国コーラルを奪回したあとは三国三つ巴の戦いが始まろうとしているのでありました。

なんか、面白くなってきたかな。
わき役を書くのがうまくなった感がある。
けど、肝心の主役の王様がどうだろ?
理想の男性なのかもしれんが、つまらなすぎるか。

ストーリー自体はなかなか楽しく読める。風呂敷も広がってきたことだし。
ただ、グインの影響がちらほら見えるのは、いたしかたないことなのか?
しかし女キャラの魅力のなさは栗本薫を上回ることはなはだし。
戦うキャラは男女とわず書けるが、受けキャラがとことん書けないんだな。






  デルフィニア戦記 9〜14  うな

動乱の序章〈1〉―デルフィニア戦記 第3部 (中公文庫)
茅田 砂胡
中央公論新社





ファンタジー。
ようやく中盤が終わったというところか。
大体、話の全貌というか、落ち着きどころがわかってきたが、なんか、けっこうちっちい話なんだな。魔法惑星ボンジュイのこととかは、ほとんなしで終わりそうだ。ちょっとがっかりだ。

あいかわらず、グインの廉価版という感じはぬぐえない。
安定感はあるんだが、小さくまとまった一品という感じ。
主要キャラが死んだり、ひどいことになったりしないから、なんか嬉しいようなご都合主義なような。
さすがに、一ヶ月囚われて拷問されても、五体満足というのはあんまりだよな。義父は脚が焼け爛れてたのにさ。

結局、三国間の戦争が終わって、それで完結っぽいな。なんというか……リィとかの謎はほっときっ放しなのだろうなと思うと切なくなる。

ちょっといっぱい読んだので、メインキャラごとに感想を書いてみるか。
つうか、たいがいのキャラの顔が、ほかのマンガやアニメ、ゲームのキャラに見えてしまうので、それも書いておこう。

・リィ
見た目は少女、中身は男。
最強の格闘能力と超能力を有してついでに化粧をすると超美人という厨設定キャラ。
着飾ると超美人というのはやり過ぎな気もするが、まあいいか。
やたらスーパーなのに、敵をかみ殺す習性をひたすら隠しているのが謎。
かみ殺すってそこまで衝撃的か? あの超人っぷりや超能力に比べればべにショックを受けないと思うんだが。


・ウォル
クッキングパパのように善良でワイルドな放浪王。
あいかわらず、強さが中途半端。
ザコには無敵だが、強いやつらに無力というピッコロみさんたいな感じ。役に立つのか立たないのか……
ポーラとの恋愛部分は、ちょっと適当すぎる。がんばれ。


・シェラ
銀髪の美少年でいつも女装癖しててメイドで暗殺者というやはり厨キャラ。
メインキャラで、作者にも寵愛されていて、出番も多いはずなのに、なぜこんな微妙感があるのか?
女装男という設定がヴさくていらない。心身ともにどう見ても女なので、女でいいじゃないかと思う。やおい的に譲れないのか?
つうか、ライバルであるヴァンツァーともども、ストーリーにいらない気がする。


・バルロ
きれいなベック公ことバルロ大公。
ナリスの従兄弟で第四王位継承者という立場にも関わらずやたらと出番が少なく影が薄かったベック公とは違い、逆にやたらと出番が多い。立場的にはこっちのが常識的な扱いだと思う。
皮肉屋らしいが、外見言動ともにまったくそう見えないのがどうかと思う。皮肉屋のくせに善人すぎるからか? うなぎビジョンでは乙女ゲーム『アンジェリーク』のオスカー様にそっくりです。


・ナシアス
なんのためにいるのかわからない優等生過ぎる騎士団長。
バルロといちゃいちゃするためだけに作られたようなキャラで、そのためだけの存在にしか見えないため、出番のわりに影が薄い。必要意義も感じない
顔は『天空のエスカフローネ』に出てきたアレンに見えてならない。


・エンドーバー夫人
準レギュラーなのに異常にうすい夫人。
デビ・フェリシアのようにしたかったのだろうか?
確かにデビ・フェリシアはもったいない使い方しかされてないが、栗本先生よりなお女キャラの扱いが下手な茅たんにはとてもとても……


・ガレンス
・アスティン
・ルカナン
アーマーナイト三人衆。
いちおう別キャラなのに、どう考えても三人とも同じ雰囲気と性格にしか見えない。多分外見も同じ。FF9のスタイナーみたいな感じだろう。


・イヴン
いけてる遊撃団長。
スカールを軟派にしたような設定だが、服が黒づくめにまったく見えないへらへらぶり。
まるでファイアーエムブレムの傭兵にいそうないい男。


・ジル
ハーディンだ、ハーディンがいるぞ。童貞皇帝様がいるぞ。


・ロザモンド
オスカルかイリスかといったような男装の麗人キャラ。
しかしまったく強そうに感じないため、むしろ萌え。


・ドラ将軍
『幻想水滸伝2』のキバ将軍ですね? わかります。


・シャーミアン
リギアさんの廉価版ですね? わかります。
無駄に出番が多く恋愛沙汰まで繰り広げるが、しかしやはりキャラが弱くまったく魅力的に見えないという、じつに茅たんらしいキャラ。


・ゾラダス・ミンゲ
曹操を意識したような傲慢な王だが、僕の目には若本ボイスでしゃべるバール将軍の姿がはっきりと見えていた。


・ヘンドリック伯爵
・アヌア侯爵
存在的にもキャラ的にも区別がつかないのに準レギュという意味不明なキャラたち。
ブレックス准将のように素朴なヒゲ面であるに違いない。


・レティシア
超絶美形最強バトルマニアアサシンというやはり厨キャラ。
先に登場していた同僚アサシンであるヴァンツァーと丸かぶりし、その存在意義をまるきり奪った憎い奴。
超絶美形のはずなのに、俺の目にはがにまたでよたよたと歩く道化師の姿が見えていたのだった。


・ファロット伯爵
トレーズ様! トレーズ様じゃないか!
アサシン組織の親分様。実に頭悪そうな美形悪役である。


こんな感じでとにかく、いろんなアニメのキャラがいりまじっているカオスなファンタジーのイメージ。
つまりそのくらいに場の空気がかるい。 本当に、その辺、グインは実にうまくやってたなあ。

でも、ま、面白い。盛り上がってきたし。
でも、人死にまったくでないのって、戦記物としてはどうなんだろうね?






  デルフィニア戦記 15〜18  うな

伝説の終焉〈1〉―デルフィニア戦記 第4部 (中公文庫)
茅田 砂胡
中央公論新社

18巻にて完結。
久しぶりに長編シリーズを読み終えたわけだが……
正直なところ、がっかりというか、なんか肩透かし食らった感じ。
あまりにもひねりがなく、そしてあまりにもあっさりと終わったもんだ。こんだけ長々と読んだのに、ちっとも壮大な感じがしないのはなぜだろう?
正直、とくに理由はないけど迎えが来たから帰る、では納得が……

最後まで、メインキャラは誰一人死ぬこともなく、ひどい目にあうこともなく、予定調和のうちに終わった。
それはいいんだけど、そのわりに最後の盛り上がりに欠けまくり。
どうせなら『モンテ・クリフト伯』ばりの、もったいつけた終わり方をしてもいいのに。18巻もやってこのオチだと微妙すぎる。
結局、無駄に長い気がしたな。この話の規模なら、全十巻が妥当なところだろうに。

いずれにしろ、この作品には思うところが多かった。
基本的に、グインのパクリなハイファンタジーのわけだが、大きく劣っているところがある。
文化が見えない。
食事にしろ、おしゃれなどにしろ、どうにも現代的な感覚で書かれすぎている。ファンタジー特有の華美さも、薄汚れた感じも、どちらもない。
そのため、どうしてもコスプレパーティーめいた感じが抜けきらない。
ハイファンタジーとしてはギリギリといったところか。

しかし、メインが群雄劇にあるのだから、かまわないっちゃかまわない。
んが、その群雄劇だが……悪役が薄い。
よって、勝てて当然という気がする。
戦争なのに悲惨な人もいない。
群雄劇としては全然不完全。
成功者の裏の失敗者、戦勝国のかげの戦敗国、そういったものを書いてはじめての群雄劇だと思うのだがなあ。

うーん、最終的な評価は、佳作といったところか。
悪くはないし、読んで損も無いと思うが、もう一度読みたいという気にはなれない。






  大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝  うな

大鷲の誓い デルフィニア外伝 (C・NOVELS Fantasia)
茅田 砂胡,沖 麻実也
中央公論新社





デルフィニア戦記全十八巻を通してそれなりに重要な立場にいたキャラ、バルロとナシアス二人の出会いと友情を描いた話。

面白いとかつまらない以前に、バルロとかナシアスって誰だったっけ?
……ああ、あの綺麗なベック公ファーンと優等生のナバールね。はいはい。
と思い出したときにはもう半分読み終わっていた。
そもそもデル戦自体が、グインサーガのいい所も悪いところも薄めたような薄味の作品で、その作家技量の低さは脇役によく現れている。
なんだかんだいって、栗本薫は脇役の立たせ方が上手い(立たせたあとの使い方はうまくないのが困るんだけど)
キャラ一人を作るに当たり、性格や設定などとともにストーリー上の役割もうまくはめこんでいるから、名前・性格・ストーリー上の役目がピタリと一致していて一気に思い出せるようになっている。これはグインサーガという大長編作品を描くに当たって得がたい技術・資質になっていた。

対してカヤタンは、やはり同人小説上がりだからなのか、メインキャラは魅力的に描けるのだが、脇役が設定先行で台詞や性格やストーリー上での役割があんまり一致していない。これをして安っぽくさせてしまっているのがカヤタンの残念ポイントなのだが、まあラノベだからいいんですけどね。

しかし、今回は完結から数年も経ってから、一つの作品としては楽しめない番外編を書いてしまったため、キャラが思い出せずにたいそうどうでもよい作品になってしまっていた。
熱狂的なファンの人だったら問題ないのかもしれないけどね、おれには無理だった。

カヤタンなー。
カヤタンも栗本薫とおんなじ病気にかかってるからなー。
栗本薫ほど勢いがあったわけではなく、一般層にも評価されておらず、自分のハードルをあげていたわけでもないからそこまで激しくは非難されてないけどさー(呆れられてはいるけど)やっぱキャラを大事にしすぎるとダメよねー。物語は終わるべきときに終わらないと。
つうかまあ、カヤタンは最初に読んだ『スカーレット・ウイザード』だけが突出して面白かっただけで、あとのは別に普通というか、最近のは自作同人誌というか、みんな『スカーレット・ウィザード』だけを読めばいいと思うんだお。野阿梓先生もお薦めだし。

この作品は、アレかな。
ちょっと前に講談社が十二国記が絵を無くして普通のレーベルで売るという手法で成功したとき、中央公論が「だったらうちもそれやるよ!」とばかりにデル戦の挿絵なし文庫を出したから、その販促かなんかで出しちゃったのかな?

デル戦は悪くはない作品だけど、これに触れるたびに「グインの中期まではほんとに面白かったんだなあ」としみじみしてしまうから切なくなるんだよねー。

(08/6/10)







  スカーレットウィザード 全五巻  うなぎ∈(゚◎゚)∋

スカーレット・ウィザード〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡
中央公論新社





SF。
一匹狼の宇宙海賊ケリーを訪ね、一人の大美女があらわれる。
あまりにも凶暴で強すぎるその女・ジャスミンは云う。
「私と結婚してくれ」
かくして宇宙を股にかけた財閥内の政争と、強烈な夫婦喧嘩が幕を開けるのであった。

傑作。
少女向けライトノベルといった感じ。
主役の二人、海賊王ケリーと女王ジャスミンにとても魅力があり、テンポよく読ませる。夢中になれた。
反面、二人がいない場面は冗長で、はっきりとつまらない。悪役に魅力がとぼしいのはどうか?

爽快に暴れてスカッとして、最後にはホロリとさせてくれるドタバタ純愛劇なのがいい。
デルフィニアに比べると極彩色で豪華絢爛、ばっかんばっかんと派手にやってるところがたまらない。 しかし細かいところよりも、要は男前すぎる女王ジャスミンとイケメンすぎるケリーにメロメロ。
長さも適度で、茅たんの最高傑作だ。






  スカーレットウィザード外伝  うな

スカーレット・ウィザード外伝―天使が降りた夜 (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡
中央公論新社


本編の直後、ケリーのとった行動とは……
一冊で35年もの月日を描ききるダイナミズムは面白いが、いかんせん外伝と銘打っておきながら「続く」といった形で終わっているのがなんとも……
デルフィニアの最後に唐突に出てきたルゥが、やはりここでも唐突にあらわれていきなり二つの作品世界がつながってしまった。そんなのアリか?

ルゥは素直で天然な受美少年といったタイプだが、どうもこの作者は攻めキャラはうまいが、受けキャラはやたら下手。
よって、ジャスミンの不在をうめるには不十分な役である。
でも、じいさんになっても変わらないケリーの方は魅力的。ケリーにだったらしていただきたい。






  暁の天使たち 1〜3  う

暁の天使たち (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡
中央公論新社


一巻
え、えすえふ?
ファンの間で一瞬にして作者の名声を貶めた問題作みたいですが、まあ問題作でした。
でも思ったよりは楽しめた。でも飛ばし読みした。

話を要約すると、作者の『デルフィニア戦記』で作者に寵愛された五人のキャラが、SF世界に甦って学園生活送っちゃうよ。そうしているうちに『スカーレット・ウィザード』の主役二人もでてきちゃうみたいでこりゃ夢の饗宴楽しみだねワーイ!

という話ですが、あまり無理するな。
いくら同人あがりの作家とはいえ、自作の同人はじめたら終わりだぞ、などと思うのはみんな同じみたいで、すでにファンの皆様から叩かれ「ちがうもん! 最初からこうするつもりで前の話も書いてたんだもん!」的な言い訳が一巻であるこの本のあとがきに書いてあるあたり、ああ、おれはなんだってこういう因果な救えない奴ばかりのファンになってしまうんだと嘆くことしきりですが、皆様いかがお過ごしですか? 
でもとにかく表紙だけはいただけない。まあ絵柄についてまでは云々云わぬが(そもそも沖麻美也の時点でかなりどうかと思ってたし)イラストレーターを決めた理由が、作者がネットしているときに「このイラスト、あたしの作品の主役にぴったし! 絶対あの二人よー!」と思い込んで無理いって頼んだらしいというのがもうとてもげんなりで、さらに評判が悪かったのか二巻からは唐突に別の人になっててもうゲンナリストですよ兄さん。
なんだっておれはこんな奴ばかりのファンに(以下略)


二巻『神々の憂鬱』
だるい。
作者自身があとがきでも書いているが、ちょっといままでのお話の整理をするつもりだったのが、だらだらと長くなってしまって話のほとんどを占めてしまった。
つまり一巻丸々、いままでのあらすじと現在の状況なわけで、これは退屈しないわけはない。
ナレーションだけで一話が終わりそうになってた往時のドラゴンボールかよ。

作者の手癖だが、主要人物以外の味方を「いい人だがなにもわかっていない凡人」と書きすぎているので、かれらメインで話が進むとイライラしてくる。
話の最終的な目的、行く末が提示されていないのも散漫とした雰囲気を与えている。
『デル戦』も『スカーレット〜』も、一巻の時点で最終目的が明示されていたのでわかりやすかったものだ。

何巻続けるつもりなのかは知らないが、ちょっと出だしで手間取りすぎかな。
時に、この巻からのイラストレーター、鈴木理華と云う人の絵が、がんばっていのまたむつみに似せてみました! という空気がびんびん漂ってきていて泣ける。心なしかサインの書き方まで似ている気がする。いのまたむつみみたいに売れっ子になるといいね……(でも今のいのまたむつみなんて真似してどうするんだと思うことしきり)


三巻『海賊王の帰還』
まったり進行だし脇役はうざいし相変わらずなにがしたい話なのかもわからない。
が、許す。
海賊王が帰ってきたので許す。
出番が8ページでも許す。
それくらい、復活したケリーが変わらず魅力的だったのは嬉しい。

全体的に、話が「スカーレット〜」寄りだったのもあり、また話がケリー復活に向けてこちらを期待させるようなものだったので、気持ちよく読めた。
次巻での海賊王の活躍が楽しみである。いじょ。






  暁の天使たち4〜6  うな







  暁の天使たち外伝 全二巻  うな







  嘆きのサイレン  クラッシュブレイズ1  う

クラッシュ・プレイズ 嘆きのサイレン (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡
中央公論新社





SFみたいなの。たぶん大長編。
『デルフィニア戦記』と『スカーレット・ウイザード』の続編であるところの『暁の天使たち』のさらに続編。
ぶっちゃけ、作者本人の書いてる同人小説まがい。

あらすじ
暴走している宇宙船を止めにいったら、ものすごい洗脳光線を出していて困りましたよ。
だからなんとかしましたよ。以上

うーん……
ううううううんんんんんんん……
何だろう、この萎え感。
オープニング、赤髪の怪力巨大美女ジャスミンは相変わらず魅力的で、もちろん海賊王ケリーもワルかっこよく、出だしからわくわくさせてくれたのだが、すぐに萎え萎えさせてくれた
だって、いきなりケリーが助けを呼ぶんだもんな。あきらめはやっ。

で、助けを呼ばれたルーは、これは神々の中でも最強の神、というどうしようもない存在なので、いろいろあってもこいつに頼りっきりで全部解決してしまう。
RPGでいうと、ラスボス以上に強いキャラが最初からパーティーにいるようなものだ。
どきどきもワクワクもない

超絶美形で性格美人で料理上手で超長生きで普通に戦っても最強で、歌を歌うと洗脳したりまわりの生物を皆殺しに出来たり、とにかくどんだけ万能キャラなのか。
こんなキャラをひょいひょい出すのはどうなの?という。
このキャラがいるだけで作品全体がおかしくなってしまう。
そのことにみんなが気づいている。作者だけが気づいていない。
一人でこいつに萌えている。なんとかしてくれ。

ストーリー自体も番外編みたいなどうでもいい話で、わざわさ完結した作品を続けて書いたのがこれかと思うとちょっと萎える。
ぼくはケリーとジャスミンのでこぼこ道中が見たかったよ……
デル戦連中、マジいらない。
このシリーズが出つづけることによって、すでに完結していたデル戦の評価も下がりつづけるのかと思うと、なんだか悲しくなる。

ケリーとジャスミンの魅力は健在なんだから、こいつらで書いてくれ、お願いだから。
とにかくルーを出すのやめて。本当にもう。それだけでかなり面白くなるから。

(06/11/28)







  スペシャリストの誇り クラッシュブレイズ2  うな∈(゚◎゚)∋

クラッシュ・ブレイズ スペシャリストの誇り (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡
中央公論新社





シリーズものの番外編みたいな中・短編が三つ。

★『ファロットの美意識』
かつて天才暗殺者として数え切れない人間を殺してきたレティシアに連続殺人の容疑がかかる。


★『ジンジャーの復讐』
大女優ジンジャーがクーア財閥に喧嘩を売る。


★『真紅の魔女』
旧時代の戦闘機を馬鹿にする若者を翻弄し唖然とさせる謎のパイロット。


うな印のハードル低いなー、と思うが、久々にこのシリーズ読んでて痛快だったのでおまけでうな印。
基本的にこの人の話は、とんでもないことを云ったりやったりする天才。それに怒ったりとまどったり呆れたりする一般人。訳知り顔でニヤニヤする天才の友人と読者。
という構図が頑ななまでに続いており、はっきりいってその精神性がいやらしい感じもするのだが、どうもニヤニヤしてしまうのだから仕方がない。

特に「ファロットの美意識」では、久々にレティシアやリィの魅力が出ていたのもさることながら、なにげに地味なところで構成や伏線が上手く、くだらない日常描写がそのまま話のオチにつながっていくところなんて、実に心憎い。
キャラクターもののお遊び小説だから、作品自体のテーマ性とかそんなものは薬にしたくもないが、純粋にキャラクターがいきいきとした良作だと思う。

で、なんで最近いまいち感の漂いまくっているこのシリーズのなかで今作は楽しめたのか考えたんだが、それはひとえにルーの出番が少なかったからだろう。
このルーというキャラクターはどうしようもないキャラでして、ほんとに。
RPGに例えるなら、作中の一般人が「おれレベル10だぜ」「いやいや、おれなんてもう12までいったぜ」と自慢げに話していたとする。そこへ主人公たちがあらわれて「あ、おれレベル60だから」としれっと云う。
みんなが「んな馬鹿な」と嘲笑っているところでレベル60らしい大活躍をしてみんなポカーン。読者ニヤニヤ
そこになんとなくあらわれるルー。「あ、ぼくはレベル999です」

しらけるよね、ホントに。インフレがおかしいんだもん。
しかもそれが味方なんだから、緊迫感も糞もない。
ドラゴンポールでいうなら、レッドリボン軍と闘ってる途中で悟空が超サイヤ人になっちゃったみたいな感じ。
それで美形でおしとやかで性別がころころ変わって料理上手で歌の天才で作者のご贔屓で、と。
要するにナリスをさらに頭痛くさせたような存在だからな。早く死ねばいいのに。

(07/5/9)






  ヴェロニカの嵐 クラッシュブレイズ3  うな3

クラッシュ・ブレイズ - ヴェロニカの嵐 (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡
中央公論新社





SFなのかなあ。

異質な由来を隠し、平穏な学園生活を送るリィとシェラ。
今回のかれらは、課外授業で惑星ヴェロニカにキャンプに訪れていた。そこで自炊を学ぶことで単位が得られるのだ。
元々、中世世界で生きてきた彼らにとって、キャンプなど遊びにもならない。軽い気持ちで訪れたのだが、しかし彼らがおろされたのはキャンプ場ではなく、見知らぬ無人の惑星であった。
助けにくるもののない絶望的な状況の中、リィたちはおびえる都会っ子たちとともにサバイバル生活をはじめるのだが……

まあ、あれだね。
無内容っぽいよね。
このクラッシュブレイズってシリーズ、本筋がないよね。キャラがわいわいしてるだけで。
それがダメとは言わないけどさ、
いや……
やっぱダメだあ!

一冊ダラダラとやるような内容でもないだろ。
いつも通り大変な状況になったけど主要人物はへっちゃらへーで、いつも通りにしょぼい悪人がしょぼい感じに裁かれて、あーめでたし。どうかと思うよ。
特に、最後のほうで、結局ピンチを助けてくれたのが万能超人ルウ様だったので、もうかなりどうでもE感じ。おまえはすごいよ、最高だよ。もうどうでもいいよ。

文章も、その、なんというか、癇に障る改行タイミングが多くて。いや、昔からこの人は書き方雑だし、変な文章になりがちな人ではあるけどさ。今回は本筋が無内容に過ぎたので、だらだら感と妙なリズムがやたらと浮いて感じた。

つかま、そんな細かいことはどうでもいい。
いいから黙ってルウをリストラするんだ。
あいつがいる限り、面白くはならないぞ

(07/5/24)







  クラッシュブレイズ







  桐原家の人々 全四巻  うな

桐原家の人々 (1) 恋愛遺伝学講座 C・novels fantasia
茅田 砂胡
中央公論新社





ホームコメディというかホーモコメディというか……
たったこれだけの話を丸四冊も書けるところがすごいっちゃすごい。

今回、珍しく女キャラが立っていた。猛はいいし、まあこも悪くない。
逆に、男キャラが弱かった。都とか、あざとすぎてちっとも萌えられねえ。主人公も凡庸すぎるし。
冷静に考えると、ただ単にきつい性格のキャラがうまいんだな。ていうか、それ以外がだめというか……。
全体通して悪くは無いんだがいまいち物足りない。ストーリー的にも、コメディ的にも。

4巻はわりと番外編的になっていて、三巻までにした説明の繰り返しがうざかった。
やたら友情を描く人だけど、ちっとも友情っぽく感じないのは、やはり女性作家だからなのだろうか? やおい作家だからなのだろうか?






  レディ・ガンナーの冒険  う

レディ・ガンナーの冒険 (角川スニーカー文庫)
茅田 砂胡
角川書店


ファンタジー。長編。
お転婆な女の子と獣人たちの大冒険みたいな話。

微妙。この作者の中では一番つまんなかった。
シリーズとも一発ネタともつかないノリになってしまっているのが難。
動物好きなのか、マンビーストの描写はまあ良いんだが、アクションシーンがわかりにくい。あんま面白くないし。
スニーカーが少年向けレーベルだから、へんに意識したのか?
ともかくも、この人は一冊でまとめる能力は皆無だな。

キャラがいっぱい出てきたわりには、特筆するような魅力的なのはいなかった。
悪役がとってつけたようなのはいつも通り。






  レディ・ガンナーの大追跡 上・下  う

レディ・ガンナーの大追跡〈上〉 (角川スニーカー文庫)
茅田 砂胡
角川書店





ファンタジー。
シリーズ第二作目。

ぼちぼち……かな。一作目よりはぐっと良くなった。
シリーズ物として決定したためか、世界観にも奥行きが出てきたし、わき役もマンビーストがいっぱい出てきておかげで、ずいぶんとにぎやか、かつ良くなった。
アクションシーンもわかりやすくなってたし、村人の身勝手さに嫌な気にもなれたから、感情移入もできたんだろう。

が、全体的に良くなったのに、どうも主役級のキャラが……。
これはただの好き好きかもしれんが、しかし主役がうすっぺらい。そのまわりも。
おかげで、道具立てや雰囲気はいいのに、いまいち吸引力に欠ける。
美形ばかりなのもどうにかならんか? さすがに多すぎる。
わき役まで美形だらけにするのはやりすぎかと思うが。美形は希少価値ですからな。






  レディ・ガンナーと宝石泥棒  う

レディ・ガンナーと宝石泥棒 (角川スニーカー文庫)
茅田 砂胡
角川書店





ファンタジーシリーズの、えーと第三弾。

んー。 んんんんんん。
えーと、もうこのシリーズやめたら?
いや、つまらなくはないんだけど、つまらなくはないんだけどさ、続けてどうなる話でもないのでは……









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