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森 絵都

タイトル評価一言メモ
つきのふねうなぎ中学生に是非読ませていきたい!





  つきのふね  うなぎ

つきのふね (角川文庫)
森 絵都
角川書店





とある事件をきっかけに親友の梨利と仲たがいしてしまった中学二年生のさくら。 梨利を好きな勝田は、どんどん非行へとはしる梨利を立ち直らせようと、さくらと梨利を仲直りさせようとするが、単にバカなストーカーに過ぎない勝田にはろくなことができなかった。
その頃、さくらは事件をきっかけに出会った青年、智の部屋に入り浸っていた。智は日がな一日「かれら」に頼まれたという宇宙船の設計図を描いていた。智はおだやかな青年だったが、次第にかれの狂気は深刻なものへと変化していく。
時をおなじくして、放火魔の噂が街に流れ、梨利は少女売春斡旋グループの一員として補導され……

これはいい話。普通の意味で。
勝田のバカなストーカーっぷりも、智青年の静かな狂気も、梨利の素直じゃなさも、主人公さくらの中学生特有の不安定さも、すべて美しい。友情という実体のないものを賛美して、それでいて、なお美しい。
あまりにも美しく、あまりにも奇麗事で、でもそこにうそ臭さがないのは、きっと作者がその美しさを信じているからだ。信じたいと思っているからだ。
文章のよみやすさ、過剰ではない中学生らしさ(これは難しい)、そうした基本部分のクオリティの高さに加え、構成の丁寧さをうちこわしてまで突きつけられる終盤の熱情。およそすべてにおいて、完成されている。

こういう話に、いつのまにか大人になってしまっていた人は弱い。弱いんだからしょうがない。
ちょっと自分のキャラでは語りづらい感じにいい話なので、なんかもうとりあえず読めばいい、という感じだった。

(08/11/8)










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