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森巣 博

タイトル評価一言メモ
神はダイスを遊ばないうなどう見てもカタギじゃない人間の本





  神はダイスを遊ばない  うな

神はダイスを遊ばない (新潮文庫)
森巣 博
新潮社





オーストラリアを拠点に三十数年を常打ち賭人として過ごした著者が、実体験を交えて描くノンフィクションなんだか小説なんだかエッセイなんだか哲学書なんだかまったくわからない珍妙な本。
とにかく作者が変人。
ほかに類をみない経歴の人間が、その経験をいかんなく発揮してホントなんだか嘘なんだかわからない話を、胡散臭さばっちりなのにリアリティ抜群というわけのわからない文体でへらへらとつづっている。

話の大筋自体は、とあるカシノで知り合った美人ディーラーがギャンブラーへと転身し、成功の後に転落、その再起をフォローする、というだけの話なんだが、話が脇道にそれるそれる。
世界各地のカシノ事情や有名なギャンブラーの話、実体験に基づくギャンブル警句などを、聖書だの西行だのに則して話したりして、作者の引出しの多さと偏りが実に面白い。
バカなようで知識人。知識人のようでただの変なおっさん。
八方破りでいいかげんだが、自分の経験則から生まれたセオリーには忠実で、その理屈に関しては「これは理屈じゃないので説明できない」と何回も書く。文章としてどうかと思う。
が、そのくせ、そのセオリー・警句のなんと実感に満ちて静かな迫力のあることよ。
これはギャンブルを血肉としている人間にしか吐けない言葉だ。
そんでもって決め台詞のように連発される「やってやろうじゃあないのさ。やってやろうじゃあないのよ」という文の頭の悪さがたまらない。

話の脇道はギャンブルだけに限定されず、政治だの経済だの教育だのから、「オーストラリアではピンクのリボンをつけた羊は牧場主の愛人」といったどうでもいいトリビアなんだがウソビアなんだかわからないものにまでいたる。
そのすべてにわたって人を食った話し方がいちいちおかしい。面白いというよりおかしい。笑えるっつうか首をかしげる。なんだこいつ? と思う。あらゆるエピソードを信じていいのかいけないのかわからなくなる。

しかし、この本はいけないな。
ギャンブルが負けるようにできているという仕組みを平然と説いているにも関わらず、なんかギャンブルをしたくなってしまう。カシノに行ってみたくなってしまう。ギャンブルでしか味わえぬ白熱と虚脱を体験したくなる。

ギャンブルが好きな人はたくさんいるし、そういう人が書いた本もたくさんあるだろうが、ギャンブルが人生の中心な人は滅多にいないし、そんな人が書いた本は稀有だ。
ギャンブル好き、カシノ好きなら一度は読んでおくべき本だろう。
それにしても、なんでカジノ好きは表記や発音を「カシノ」だの「カッスィーノ」だのこだわるのだろうか?

ところで、いまアマゾンつけて確認してみたら、マーケットプレイスにしかないうえに何故か4980円とかついてて吹いた。
ハードカバーも4000円からとかになってるし、え? なにこれ、ちょっとプレミア本なの? つうか薦めても意味ないじゃん。100円で買ったのに……
(その後、急落してた。なんだったんだ一体……)

(08/12/21)










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