タイトル | 評価 | 一言メモ |
戻り川心中 | うなぎ | おれも遊女と粋にあそびたいっつーの! |
なんか大正ロマーンというか昭和ロマーンというか、そんな感じの短編集。 ぶっちゃけ面白かった。ジュリーのアルバム「女たちよ」を流しながら聴きたい感じ。 ★『藤の香』 色街で起こった連続殺人事件の話。 色街とそこに住む人々の描写がよく、しんしんとつもる雪のように心にしみていく静かな語り口もいい。特に代書屋の姿は印象深い。 まあ、それだけといえばそれだけのお話だが。 ★『桔梗の宿』 また色街の話。また連続殺人事件の話。 わりかしベタではあるが、妙に太宰的な主人公の繊細さと、幼い遊女・鈴絵のキャラ造形は見事。 おれも退屈そうにうちわの柄をかんだり、真っ暗な室内で花火してみたり、桔梗の花びらを二階から散らばらしたりされてみたいっつーの。 ★『桐の柩』 よくわからんが、兄貴分の命令で女を抱き、その後で兄貴分に抱かれるという、やたら倒錯したシチュエーションがとってもJUNEチックですね。べつにどっちもホモじゃないしね。 ★『戻り川心中』 二度の心中の後に自害して果てた歌人の真意を追う話。 文章的にはほかの作品よか好きじゃないが、このテーマはいい。 歌人になってはいるが、明らかに太宰先生だし。 ネタバレバレでいえば「太宰先生は陰鬱な性格で陰鬱な人生を送っていたから陰鬱な名作を残したわけではなくて、陰鬱な名作を書いてしまったので、それの評価をあげるためにわざと陰鬱な人生を送ったんだよ」ということで、作品を読み解くのに作者の人生を追う文学の読解法につねづね疑問を抱いているぼくとしては、この皮肉は痛快である。 また、作品のために自分の人生すら平気で捨てる姿は、芸の怖さをも思わせる。優れた作品は時に人を殺すのだ。 |