ALC ビル 塗装 桜庭一樹
インデックス読書感想文 目次>桜庭一樹


桜庭一樹

タイトル評価一言メモ
GOSICKs ―春来たる死神―うな狙い過ぎてピンとこない
ブルースカイうなわくわくのちガッカリ
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないうな∈(゚◎゚)∋これぞ少女小説。痛々しい意味で。
うな
うな





  GOSICKs ―春来たる死神―  うな

GOSICKs ―ゴシックエス・春来たる死神― (富士見ミステリー文庫)
武田 日向
富士見書房





ラノベの連作短編ミステリ。

1930年代、西欧の小国へと留学に行った貴族の三男坊・一弥。
留学生という立場と夢見がちで気弱な性格とが相まって、半年経った今でも友人のできない一弥は、所用で訪れた図書館塔の最上階で、西洋人形じみた要望を持つ美少女ヴィクトリカと出会う。
少女らしからぬ尊大な態度と言葉遣いを操り、あらゆる本を読み漁るヴィクトリカは並外れた明晰な頭脳を持っていた。
これをきっかけにしたように、次々と不思議な事件にでくわすことになる一弥は、そのたびにヴィクトリカに頼ることになるのだが……

ラノベ出身で、他ジャンルでも最近評価されている人といえば、桜庭一樹もその一人らしい。
『赤朽葉家の伝説』が推理作家協会賞受賞で、直木賞候補で、今年の「このミス」の一位らしい。なのでまあ、一冊くらい読んでみるかあ、と思い、読んでみることに。
ただまあ、読んでる途中で思い出したが、あれだ。こいつあの『EVE LOST ONE』のシナリオ書いたことで一部で有名なんだよな……。
まあ、あれは関わったものすべてが被害者といえる不幸な事故として忘れるしかないか……。

えー、本作は長編シリーズ『GOSICK』の、プレストーリーとなる短編集らしい。出版はあとだが時間軸は前で、だからこれから読み始めるのがいいとのこと。わーお、長編の一巻買ってきたつもりだったけど、なんてことないぜ!

感想としては、まあ、ミステリーとしては本気でどうでもいいよね。
バイクのライダーが、何もされてないのに首が切断されて死にました、なぜでしょう?
道路に糸が張ってあったからです。
いつの時代に流行った都市伝説だよ!
全体的にこんな感じだし、そこは楽しむ要素じゃないのだろう。

じゃあどこを楽しむのかといえば、ツンデレで尊大で甘い物好きで何気に人見知りで毒舌のきついロリっ子が、へたれに心を開いていく過程を楽しむのだろう。
しかしなんだろう、この萌えなさは?
妙に設定にもヒロインにも意図的過ぎるものを感じて素直になれず、ありていにいって気持ち悪い。そんなんで読者が萌えると思ったら大間違いなんだからね!とかいう気持ちになる。

やっぱあれか? 作者が女性だから、素じゃくて狙って書いているような感じがして、そこがなんか入り込めない感じなのか?だったら無理に萌えなんかしなくていいよ、という気持ちになった。

下手だとも思わんが、なんか全体的に気に食わない。
うーん、多分ラノベ向きじゃないんだろうから、最近評価されているという一般小説の方を一冊くらい読んでみるか。

(07/12/27)







  ブルースカイ  うな

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)
桜庭 一樹
早川書房





長編SF。
17世紀、ヨーロッパ。
マリーは祖母と二人で平和に田舎で暮らしていた。しかし魔女狩りがはじまり…… 21世紀、シンガポール。
男たちは大人になることのない永遠の青年として存在していたのだが……
そして2007年、日本……
三つの時代を舞台にしたSF。

うん……うん、うまいね。ラノベのときより全然うまい。
文章の読みやすさはだけは残して、あざとさ安っぽさをなくしたいい文章になっている。
特に第一部のヨーロッパの片田舎の描写はなかなか美しい。ストーリーも謎めいていて、なかなか引き込まれた。この17世紀のヨーロッパが後の物語とどうつながるのか非常に気になった。
第二部になってがらりと舞台も雰囲気も変わり、ますます引っ張られた。

が、読み終わった時には「え、その程度?」とか「え?第一部の思わせぶりな部分、全部本編と関係なし?」とガックリきた。
これ、SFにしないで普通にヨーロッパの魔女狩りの時代を生きた少女の話にした方がずっと面白くならね?

筆力が悪くないのはわかったが、この人にSFは無理だな、と感じた。
別に設定バリバリのハードSFにすることはないけどさ、こう、あまりにも企画倒れっぽいと切なくなってしまう。
思えば彼女がシナリオを手がけたゲーム、問題作『EVE THE LOST ONE』もなかなかにSF部分がしょっぱくて切なかった。向いてないのか、SFが。まああれは多分、企画段階で切ないことになってたんだとは思うけど。

なんかこう、もう一冊読んだものかどうか判断にまようような感じになってしまった。
ただ僕に云えることは主人公の名前の青井ソラがAV女優みたいだってことと、僕には蒼井優と蒼井そらの違いがわからないってことだけだ。

(08/10/29)







  砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  うな∈(゚◎゚)∋

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)
桜庭 一樹,むー
富士見書房





母子家庭で貧乏で、なのに兄はひきこもりで美形で優しくて超頭が良くて週一回しか風呂入らないけど清潔で通販でわけわかんないものばっかり買っていて、そんな兄を一生養うために中卒で自衛隊に入ろうと思っていた13歳のなぎさは、自称人魚の虚言癖の転入生・海野藻屑に妙になつかれてしまうのだが……

(/I) はじめは適当に読んでいたのだが、藻屑の確定された死からさかのぼる構成に「おや?」と襟をただし、十数ページ読んで「これはまともな百合の匂いがするぞ」と真面目に読んでしまった。
結果として、百合というよりJUNEだった。
少年少女の不安、揺らぎ、世界への不信、そういった感情を一気呵成に書き上げた、情念の作品だ。

要するに中二病の痛い少女が痛いままに死んでしまうだけの、オチも救いもなにもない話だが、ここには作者の感じた真実が赤裸々にある。
実弾主義と称して、実のある行為のみを追求しようとしながら、意味のない砂糖菓子のような虚言につきあってしまうなぎさの不安定さ。
外の世界をすべて捨てることで神の視点を得、完全な存在となった兄。
現実を虚言で糊塗し、虐待者である父に盲愛を捧げる藻屑。
絶望にすらならない三者三様のバランスを欠いた世界観が、ある一瞬だけ近づき、永久に別離する。あるいは成長によって。あるいは決別によって。あるいは死によって。
そうした青春の縮図を、叩きつけるように書き上げている。
ここにあるのは、巧稚を越えた情念・情熱だ。
少年少女が、思春期に閉じこめる、あの絶望にも希望にもならない曖昧な感情。ただそれを紡ぎだしている。

ラノベレーベルから出しているせいか、あるいは素の書き方がこうなのか、やたらと無駄な改行が多く、不必要に語りすぎている部分も多いのが難ではあるが、この人は今作みたいな少女による一人称が正解だな。三人称などに比べると、文章のリアリティ・スピード感がちがいすぎる。
それになんかリアル百合って感じをはじめて味わったかも。この依存と共感と苛立ちとが不安定なままに成立している感じが、なんとも女性同士で少女同士って感じなのだ。

桜庭一樹がなんで評価高いのかやっとわかった気がした。つまり少女小説の人だったんだ、この人。これからは少女の一人称ものを中心に読んでみよう。

つうか、ちょっとグーグル先生に聞いてみたら、今作が文芸畑に注目されるきっかけになったとかなんとか。なるほどなー。
しかしそれにしても挿絵がひどいな……つうか文庫で出たあとに単行本化されたみたいで、なおかつ挿絵が完全排除って、また乙一とかの商法かよ……たしかにひどい挿絵だけど、それはそれでなんかむかつくよ……


(09/2/14)





  少女には向かない職業  うな

少女には向かない職業 (創元推理文庫)
桜庭 一樹
東京創元社





田舎町でアル中ニートの義父と生活疲れの母の間でげんなりしながらも、友達の前では明るく振舞っていた中二の葵は、ある日むしゃくしゃして通りすがりの山羊を殴っていたところをクラスメートの静香に見られてしまう。
静香は葵の義父への憎しみを見抜き、殺すことを提案するのだが……

中二病がリアルすぎる。
中二病的な奇矯な行動、中二病にいたる環境、中二病的心理、そして中二病から覚める瞬間、そのすべてがリアルすぎる。ここまで冷静かつ的確に中二病を描いた作品があるだろうか?

休みの日の午前中は港でおばあちゃんたちとエビの殻剥くアルバイトして三時間で1500円とか、遊びに行くときは市内にでなきゃいけないとか、家だとうるさいので外でDSやってるとか、そういう細かいところがやたら生々しく、語彙が少なく落ち着きに欠けた一人称と相まって、このうえもなくリアルに女子中学生。
そこに他の追随を許さない生々痛々しい中二病描写が組み合わさった状態はまさに中二無双といった状態だ。

が、そのリアリティに反して、ストーリー自体はやっぱりひねりがまったくなく、盛り上がりにはまったく欠けた。オチも非常にどうでもよい感じ。
終盤、二人のどちらが嘘をついているのか惑わすような感じになっていたが、べつにいままでの話を丁寧に読んだところでどちらが嘘をついているか推理できるわけでもなく、またどちらが嘘つきでもいいやって感じで、非常にどうでもよかった。 そういえば作者がまだ山田桜丸であった頃にシナリオを書いたゲーム『EVE The LOST ONE』でも、似たようなことをやってて、やっぱり盛り上がりに欠けてたな。癖なのか?

中二病描写に関しては素晴らしいものがあったが、それ以外に関しては凡庸で、ページ数的にはあまり長くないのにちと冗長さを感じた作品。
女子中学生な気持ちや中二な気持ちを味わいたいならオススメって感じだなー。

(09/2/16)





  タイトル










読書感想文 目次に戻る

inserted by FC2 system