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笹沢佐保

タイトル評価一言メモ
木枯らし紋次郎1 赦免花は散ったうなぎ紋次郎カッコイイ!





  木枯らし紋次郎1 赦免花は散った

赦免花は散った―木枯し紋次郎 (1981年) (時代小説文庫〈36〉)
笹沢 左保
富士見書房


時代小説。短編集。
そういや時代小説はほとんど読んだことないので(司馬ちゃんは歴史小説)ためしになにか読んでみようと思ったものの、特になにも思いつかない。
こういう時は有名なのを行こうと思い、山田風太郎にしようかと思ったが、忍者物だしなあ、と考えなおし、池波正太郎に行こうとしつつも、鬼平犯科帳もちょっと……なんて思ってたら、岡本綺堂と木枯らし紋次郎が残った。

で、とりあえずこっちにした。
ちなみに知らない人に説明するならば、木枯らし紋次郎とは、三度笠に長脇差の股旅姿、頬に刀傷で口には長い楊枝、キメ台詞は「あっしには関わりのねえことで」の、かつて中村敦夫が名演した、あのキャラクターである。
ゲームファンには「風来のシレン」の元ネタになったキャラ、と云えばわかりやすいだろう。

で、なんでこれにしたのかと云うと、吉川晃司が大好きらしいから。
思えば、吉川晃司は最近、三池監督と組んでやたら日本刀を振り回しているが、その「日本刀とオレ、カコイイ」幻想はどこからやってきたのか、疑問であった。
宮本武蔵ではないだろう。吉川晃司のもつイメージは、求道者のそれではない。
同様に、柳生十兵衛あたりもダメだ。
かといって、忍者系の忍んでいる感じもない。
じゃあ武将かというと、集団を率いる柄じゃない。そもそも品がない。
品がないので、武士は全滅。月代も嫌いそうだ。
規律を守る側という意味では、同心もダメだ。同様に、新撰組もダメだろう。
じゃあ維新志士の、竜馬や桂、武智あたりの腕利きがイメージかというと、思想なんてもっているキャラじゃない。
人斬り以蔵あたりの人斬りならば合わなくもないが、彼らはしょせん飼い犬なので「おれは野良犬」とか思ってるK2幻想に合わない。
野良犬ゆえに正義の味方は好まないので、桃太郎侍なんかもダメだ。

で、最終的に残ったイメージは、いいところの武家の次男坊か三男坊、いわゆる浪人である。
親のすねをかじり「おれは本気出せばすごいよ」とか云いながら、なにもやることはないので飲んだり遊んだりしながらなにもすることなく死ぬ。ピッタリだ。

しかしこれは真実に近すぎるのでダメだ。もっと幻想に近くなければ。
で、浪人ぽい時代劇のヒーローと云えば、あとは満月殺法の眠狂四郎しか知らない。
実際『パンドーラ』のPVでは蓬髪の浪人者といった感じで、眠狂四郎に近いような気がしないでもなかった。

と、いうことは前々から思っていたわけだが、そんな矢先に「木枯らし紋次郎が好き」と聞いたので、読んでみたわけだ。
なるほど、これがK2の理想だったわけね。

基本的に風来坊のヤクザである。
腕は恐ろしいほどに立つ。しかし正式な剣法などではなく、度胸と経験による喧嘩剣法である。
長脇差は大事にするが、それはあくまでより多くの相手を斬るために長くつかうためで、名刀を愛しているわけではない。
「自分などこの世に存在してもしなくても同じである」という性根は、徹底した無表情をつくり、人になにかを頼まれれば「あっしには関わりのねえことで」
クールである。

友の身代わりに罪を背負い、島流しにされ、それが仕組まれた罠であったと後に知っても、つまらぬ男を友とした自分が悪いのだ、とそれだけで済ます。
その実、根っこのところでは人の温もりを欲してやまない。無償の信頼を寄せられることに弱い。だからなにかと事件に巻き込まれる。
しかしその結果、いつも人の思いの冷たさ、世の無情さを目の当たりにする。

短編でありながら、毎回ちょっとしたどんでん返しも用意されており、ミステリー的な楽しみもできる。
話の骨子はワンパターンではあるが、趣向は毎回変えてあり、飽きさせない。
なにより主役に魅力がある。
普通に考えて、ヒットして当然のシリーズである。

けど、文章が好きじゃないのでもう読まない。やたらいっぱい出てるし。









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