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朱川湊人

タイトル評価一言メモ
白い部屋で月の歌をうな 





  白い部屋で月の歌を  うな

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)
朱川 湊人
角川書店





★『白い部屋で月の歌を』
よりましとなり、除霊の手伝いをする少年ジュン。
車椅子での生活を余儀なくされながらも、美しい先生に愛され、幸せに暮らしていたジュンだったが、ある日、生霊の少女に恋をしてしまう……


★『鉄柱』
ド田舎の村に左遷させられた主人公。村には用途不明の奇妙な鉄柱が植えられてあり…… 


表題作の『白い部屋で〜』は、あまりにも正統派な霊を題材にしたホラー。
ホラーで霊って、普通すぎて逆にびびる。
が、あざといながらも端正な文章と美しい描写。
一人称という時点で予感させる正統派のどんでん返し。
狂気と悲哀に満ちた鮮やかな幕引き。
と、なにが突出しているわけではないが、まんべんなく上手く出来た、普通に面白いホラー。

一方で『鉄柱』の方は、ただ村に鉄柱がある、というだけの設定で、なにひとつ現実離れしたことは起こらない。しかし、落ち着いた文章で淡々と村の情景を描くうちに、その鉄柱こそが村を支配していることがわかっていく。
人間の持つ心の弱さ、死の誘惑、見えない明日への不安、そういったものを鉄柱という一つのガジェットで表現しきったところがすごい。
アイデアとあざとい文体でひきつけた表題作とはまるでちがって、堅実な文章でありきたりな現実の積み重ねを描くことによって、次第に重みを増していく鉄柱の存在を表現しきっている。

派手に魅せる技巧と、地道に積み上げる技巧、双方を兼ね備えた実力派だということがこの一冊でわかる。
ホラー好きならまずつまらないということはないだろう。
なんか調べたら直木賞もとってるらしい。さもあらんという感じだ。実力は確かだもんな。
もう一冊、二冊と読んでみたいところ。

(08/10/4)










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