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新城カズマ

タイトル評価一言メモ
サマー/タイム/トラベラー 1うな雰囲気はいい
サマー/タイム/トラベラー 2うな無駄な長さだった





  サマー/タイム/トラベラー1  うな

サマー/タイム/トラベラー (1) ハヤカワ文庫 JA (745)
新城 カズマ
早川書房





長編SF。

主人公の卓人は地方都市辺里に住む高校生。
幼馴染のユウ、友人の涼、山の上のお嬢様響子、わけありなクラスメートのコージンらとともに、喫茶『夏の扉』に入り浸り、様々な本を読みくだらないプロジェクトを遂行するする日々を過ごしていた。
そんなある日、いつものマラソン大会で、ユウがほんの数秒、人々の目の前で消滅する。
タイムリープしたのだ。
おりしも時は夏休み間近、響子は早速、ユウのタイムトラベル能力に関するプロジェクトを立ち上げる。その計画がどんな結果を導き出してしまうか、その時まだれも気づいていなかった。

あー、基本設定はたぶんツボだと思うんだよ。
タイムリープ現象と、それにまつわるノスタルジーという王道を用意しつつ、随所に色んな過去のタイムトラベルものの考察を入れ、自分流のタイムトラベル物を仕上げるのだという作者の意気込みを感じる。
でもなんでこんなに読みにくく、かつイライラするんだろう。

まず、主人公達にイライラする。
みんな頭いい設定で、ぐだぐだわけのわからない薀蓄をわけのわからないままに垂れ流すし、「頭いいですよ」というエクスキューズにしかなってない会話が多すぎてうんざりする。
みんな頭いいって設定は、読者をかなり選ぶと思うんだがなあ。

ストーリーも、どうやらこれは全二巻らしいんだが、この一巻では「まさかこんな大変なことになるなんて」という類の言葉がたくさん挿入されつつ、なに一つ事件が起こってないのでイライラする。
ストーリーと関係ない文が多すぎるため、一度目を通した文でも「あれ?ここ読んだっけ?」となってしまい、読むのを再開するたびに混乱した。
それに俺は適度な衒学趣味ってのは大好きだが、物語の展開をおかしくするほどの衒学趣味ってのは大嫌いで(だから俺は『黒死館殺人事件』も嫌い)この作品における、色んな既存作品の羅列は度を過ぎていすぎる。
タイムトラベル物の作品名をだすだけならまだしも、あまり有名でない歌のタイトル(「カレーライスの女」とか)を、あまり効果的でない場面でぽんと出してきたりして、かなりどうかと思う。
まあ、萩尾望都のファンなのか、やたらと萩尾作品をプッシュしているのは、ご愛嬌というか何というか。

とにかく、上巻の段階では色んな意味でやりすぎ。細かいところまで設定を創っているのはいいが、あまりにもあちこちに話題が飛ぶので、なにをしたいのかわからない。
これらの設定が下巻で綺麗に収束するならば、面白くはなりそうなんだが……
良いところも多いだが、面白さよりもだるさが先にってしまったのが残念。
最後まで読んだら、さて評価はどうなるかな

(07/8/20)







  サマー/タイム/トラベラー2  うな

サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)
新城 カズマ
早川書房





長編SF。
うーん、なんでこういうかたちになっちゃったというか、したんだろうね。
まあ、とりあえず、一巻のぐだぐだには意味がなかったし、無駄にキャラを立てた仲間たちや、やたらと凝りまくって、年代別に何枚も挿入された架空都市の地図も意味がなかった。
オチとなる放火魔の正体は、なんか膝かっくんって感じの脱力具合だし、なによりこれらの事件は話の中心とぜーんぜん関係ないじゃないか。

エピローグに置いて丹念に描かれている未来図も、感心するというよりは鬱陶しい感じだし、設定をたくさん考えて、その考証がちゃんとしているのはすばらしいことだが、物語の中軸となる部分は簡潔なものだし、その簡潔なものを囲むのに、この設定郡はごちゃごちゃしていてまったく落ち着かない。
近年作られたアニメ版「時をかける少女」が、極力無駄を省いてオーソドックスにつくられた「時かけ」へのオマージュなら、こっちはやたらと飾り立てられたオマージュだ。
つうか、時をかける悠有の周りに集まった仲間たちが、みんなドラマを持ちすぎて、それが本筋と関係ないのにやたらと語られまくるから、うざいんだよ。


これは悠有と卓人の物語を中心に、響子・涼・コージンの話はそれぞれ別の短編とかにまとめた連作短編の形式をとるべきだったんじゃないか? そうすれば、エピローグもまだ活きてきたものを。とにかく、メインの話自体は短くてすむ話なんだよね、これ。
ガジェットを盛り込むのもいいが、たいがいにしないとうざいばかりだ。

ともあれ、作者の気合が入っているのはわかるが、それが空回りしているようにしか感じられなかった。部分的には、ずいぶんといいものをもっているのだけれども。
これが新人だったなら、今後に期待といいたいところなのだが、さて、どうしたものなんでしょうね。
とりあえず、弟分であるところの賀東招二のフルメタでも研究して、なぜ蓬莱学園がこけたのか、自らとの差はなんなのか、考えたほうがいいのじゃないかしらん。死ぬほど余計なお世話であるのだけれど。
なんつうかこー、ストレートな物語はストレートに表現しようぜ。

(07/8/29)










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