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高畑京一郎

タイトル評価一言メモ
タイム・リープ 上・下すごく普通でどうでもいい





  タイムリープ 上・下  う

タイム・リープ―あしたはきのう (上) (電撃文庫 (0146))
高畑 京一郎
メディアワークス


長編の……SF?ジュヴナイル? ライトノベル? まあライトノベルか。
なんだこの異常に普通な話は?
肉体的なものではなく、あくまで意識レベルにおける時間の連続性が狂う、という形でのタイムトラベルという設定はまあまあ、奇抜ではないが面白い。
が、すべてが異常に薄味。

同じようにタイムトラベルをあくまで意識的なものとした小林泰三の怪作『酔歩する男』と比べるとよくわかるのだが、タイムリープ現象の理由というものがなく、それに対する考察が一切といっていいくらい欠如している。そのため、タイムリープという現象自体を考察するSF的な楽しみはない。

ではタイムリープという現象を要素にした、エンターテイメント作品なのかと云うと、まあそうなのだろうが、それにしてはあまりにもキャラが薄味。
主人公カップルはあからさまなくらいに、個性を失ったエスパー魔美と高畑君だし、友人関係にも面白い、あるいはカッコいい、ないしはかわいい、まあなんでもいいが、特筆すべき特徴を備えたキャラというのはまったくなく、なにかそつなく物語をこなすために、とりあえずで配置された書割のようなキャラクターばかり。

物語を円滑に進めるためには、ときに凡庸なありきたりのキャラが必要になることは認めないでもないが、しかしSFではなくエンターテイメントとしてみるなら、キャラクターが死んでいるのは致命的以外のなにものでもない。

ではジュヴナイル的なものなのかというと、まあそういったものへのオマージュ(むろん、時かけを中心に)を多少かんじないでもないが、(この先痛烈にネタバレになるが、まあネタバレを恐れないぼくなので気にしない)だったら無駄にタイムリープのきっかけをレイプなどとするのは配慮に欠けるし、そもそもこれが「殺されかけた」や「誘拐された」でもなんでもストーリー的には同じなのに、敢えてレイプを選んでいるのだから、どうもよくわからない。
若い世代に向けたものならば、むだに読者の眉をひそめさせるだけだと思う。
まあ、この辺は自分がレイプ大嫌いなので過剰反応してるだけの気もするが。

犯人のキャラクター像がずさんとしかいいようがない粗悪なものなのも、その感を助長させる。
乙一クラスの変態性を、とまでは云わないが、せめて悪役に命をふきこんで欲しい。
レイプ癖があるから、ムラムラと来てうっかり教え子を公園で襲うようなあほうな奴が、いままで何度も犯罪を犯していて捕まらないなんて、意味がわからない。

ただまあ、深みはまったくのないすかすかで、文章も読みやすくはあるがやはりスカスカだが、起承転結はしっかりしているし、テーマ自体もつまらないものではないので、これが二時間ドラマや舞台の原作であったり、あるいはマルチED方式のゲームの原作であるならば、わりと味付けが容易であるし楽しめそうだ、とは思う。

とにもかくにも味付け。薄すぎる。
作者のもつ価値観だの世界観だのがまったく伝わってこない。あるいはないのかもしれんとすら思える。
文章力、構成力ともに雑文ライターとしてならプロレベルだが、小説家としてはどうか?










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