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竹本健治

タイトル評価一言メモ
フォア・フォーズの素数うな短編集。みっちり感はすごい。
クーSF無理だってば





  フォア・フォーズの素数  うな

フォア・フォーズの素数 (角川文庫)
竹本 健治
角川書店





著者の第二短編集。全13編収録。


★『ボクの死んだ宇宙』
★『熱病のような消失』
★『パセリ・セージ・ローズマリーそしてタイム』
★『蝶の弔い』
これらは短編、というより掌編か。
詩的な文章ばかりで、はっきり言って意味がわからない。
イメージを美しいと思えるかどうか。個人的には微妙。


★『病室にて』
1ページの一発ネタだが最初は意味がわからず、何度も読んで「あ、そういう意味か」と納得した。うまい小噺だ。


★『震えて眠れ』
ホラー。隙間からなにかが除いているという強迫観念の話。
追い詰められていく心理を描き、中篇にしあげればよかったのに、という所。
余談だが、著者の友人、谷山浩子の歌である「王国」に「震えておやすみ、ぼくの腕の中」という歌詞があるが、そこからタイトルを取ったのかな?


★『空白のかたち』
見たことないが映画で「メメント」とかいう、記憶をすぐになくしてしまう話があったと思うが、それと同じ設定の話。(追記・観た。メメントのが面白かった)
97年に書かれているが、こっちが早かったのかな?
ただ、アイディアだけで終わってしまっている感が強し。もったいない。


★『非時の香の木の実』
時間繰り返し物。
卑劣な心理はうまくかけているが、突然グロになるのがよくわからん。
いい意味でオチが読めて、読んでいるときドキドキさせたが、しかしオチの理由が曖昧でがっかり。


★『チェス殺人事件』
天才碁士、牧場智久シリーズ。
なんだが、そもそもこのシリーズはキャラ造形に失敗していると思う。
全部読んだが、面白いと思った話がなかった。囲碁に知識も興味もないからかな?


★『メニエル氏病』
酉つ九シリーズ。元が作中作のシリーズなので、本気とも冗談とも取れない話だ。
単品で見ると、微妙な話。


★『銀の砂時計が止まるまで』
著者唯一のSF、パーミリオンのネコシリーズ。
はっきり云って、この人のSFちっともうまくない。
ただ作者はSF好きらしいので、まあ可哀想な話です。


★『白の果ての扉』
激辛カレーを極める話。
題材選びがおもろい。身近で興味をそそられる。なかなかよかった。


★『フォア・フォーズの素数』
数式を駆使した数字遊び。
あるいは小説と呼べるような代物ではないが、これはよかった。
数字遊びの面白さがダイレクトに伝わってくる。
その虚しさと無意味さを指摘してオチとするのもよかった。


余談だが、この短編集全13編を収録しているのだが、わざわざ再録をひとつ加えてまでこの数にしている。
たしか第一短編集『閉じ箱』も全13編だった。
著者の師匠である中井英夫の『トランプ譚』にあやかっているのかもしれない。
『トランプ譚』は十三篇からなる連作を四つ集め、ジョーカーとして一作書き足して出版された中井英夫の短編集大成のような作品。
竹本健治も四冊の短編集を出したら、一冊にまとめるつもりなのかもしれん。
つっても第一から第二までに十年くらい経っているので、死ぬまでに完成するかどうか……






  クー  う

クー (ハルキ文庫)
竹本 健治
角川春樹事務所





SFエロスバイオレンス長編。

いや、もうね、はっきり云わせてもらいますとね、やっぱり竹本健治にSFの才能はないと思うのですよ。
『パーミリオンの猫』にしろ『腐食』にしろ本作にしろ、ミステリーにくらべてあまりにもおもんない。ただひたすらにそれですよ。

まずね、この作品、なにがいけないって、主人公である女性、クーが、どこからどう見てもただのビッチにしか見えないのがいけない。
ディスコで声かけてきた男に部屋に上がりこまれて、性的調教されたり、『マッドブル34』みたいな黒人警官にビッグコックでひいひい云わされたり、それで一応恋人には純愛をささげていて「あたしの心は汚れているわ」って、そりゃよごれていますよ、もろもろと。

それでね、まあ、流されやすい女らしいキャラならいいんですけど、軍隊学校で7年間鍛えられたセミプロ兵士ですからね、もうわけわからないですよ。
そもそもクーじゃねえだろ、クーじゃ。どこの不思議惑星出身だよおまえは。
それで能力はイヤボーンですか。これはいいさる漫ですね。

というようなことを感じさせてくれる名作でした。
だから、たぶん読まないでいいと思います。

(06/1/28)










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