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恒川光太郎

タイトル評価一言メモ
夜市うな順当な出来のホラー。つうか幻想小説





  夜市  うな

夜市 (角川ホラー文庫 つ 1-1)
恒川 光太郎
角川グループパブリッシング





★『夜市』
ボーイフレンドに誘われて夜市へ行くことになったのだが、そこは妖怪たちの集う異界の宴だった。
角川ホラー大賞受賞作


★『風の古道』
二人の少年が迷いこんだ古道は、本来は人間の入れぬ道だった

以上二編収録。

民俗学的に「この地方にはこういう風習がありました」というような気安さで異界の風景を語る文章は、読みやすく簡潔でありながら幻想的で、まさしく現代版ラフカディオ・ハーンか泉鏡花か、といったところ。
両者に比べると文章が現代的で読みやすいのが長所だが、反面、その時代、その地方というものを感じる濃厚さは足りず、その点でちと物足りない。

ホラー大賞を短編で受賞した人は、たいてい二作目には一作目と趣の違うものをだしてくるものだが、この人は二作とも同じ味わいで、そこが物足りなさの理由でもある。
逆を云えば、それだけこの路線に自信があるんだろうが。

『夜市』にしろ『風の古道』にしろ、途中で主役が交代した、といいたくなるような話で、それが良くもあり悪くもあり。
異形・異端の風習をさらっと語る手法は、過去の残酷な風習を聞かされたときのような乾いた後味の悪さを生み、独特の味わいとなっているし、15歳の老紳士や日本中に張り巡らされた裏道でしか生きられない青年などは、江戸川乱歩的な猟奇的悲哀を秘めていていい。
が、どうにも掘り下げが足りないと思ってしまうのは、おれが粘着質だからなのか?

それなりのクオリティがある作品だし、なによりこの作者は伸びしろがあるとは感じたのだが、巻末の選評で書かれているような独自の発想や幻想性に関しては、むしろちと薄いんじゃないかな、と感じた。
まあ選評書いてた荒俣宏、高橋克彦、林真理子って、全員文章が好きになれなかった作家なので、おれと趣味がまったくちがうのだろうな。
だからこの三人が好きなら、この作品も読んでみていいんじゃないかな、と思った。

しっかしほんと、ホラー大賞はホラー大賞のくせに幻想小説に甘いよな

(08/10/17)










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