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インデックス読書感想文 目次>山田詠美



山田詠美

タイトル 評価 一言メモ
ベッドタイムアイズ うな デビュー作。黒人とチンコの乙女文学。
蝶々の纏足 うな 今日もエイミーは肉食系
色彩の息子 うな∈(゚◎゚)∋ 詠美が盛り沢山
ラビット病 うな ただいちゃいちゃしてるパカップル





  ベッドタイムアイズ  うな

ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨 (新潮文庫)
山田 詠美
新潮社


 



中篇。エロス文学みたいな、そんなの。デビュー作らしい。
まー、俗にデビュー作には作者のすべてが詰まっているとはいいますが、たしかにこの作品には「黒人」「一目ぼれ」「SEX漬け」「ドラッグ」「悲恋」「おしゃれ気分」「わりとくどい」などなど、後の特徴的な部分がこれでもかこれでもかと凝縮されている。
だからゲップがでますた。

正直なところを云えば、読みやすくて面白いです。
時々、ひどくうまい文章がスッと入ってきて、うならされる。
脱走した黒人兵のあだなが「スプーン」であるあたり、よくわからんがセンスあるなあ、とも思う。(マリア姉さんはねえだろ、とも思ったが)
ただ、まあ、ねえ、どうしてもねえ。
ビリヤードやってる黒人見てたらジュンときちゃった。そしたら廊下でその黒人が待っていて、その場でメイクラブしちゃったわ、な出だしの時点で
「いや、ないだろ。そんなのねえから」
と全力で突っ込んでいる自分がいた。

ある意味、愛のコリーダみたいな作品と言えなくもないのかねえ。
相手を愛しているし、求めているが、その究極であるところの(と世間では思われている)SEXにいたったところで、なにも満たされてはいないし、かと云って、それがなくなっては困るし、相手のものになりたいと思いながら、その相手を裏切り傷つけ、相手を片時も離したくないと願いながら、かれとの幸福な未来になど怖気をふるう。

こういう交錯した感情が、矛盾とうつらずに一本の筋が通って見えるのは、吐き出された作者の感情に、誇張はあれど偽りがないということだろうし、うーん、いや、だから、きっとよく出来ているんだろうね。

たださあ、恥ずかしいだろ、これ。
唐突に英語が入ってきたりして、恥ずかしいよ。
どこの東京だよ、これ。おれ、知らないよ、こんな東京。
なにが
2sweet+2be=4gotten
だよ
こんなことを云い出す奴とは、わたし、友達になれませんわ。

だから、要するに、ぼくは山田詠美の文章とか、雰囲気とかはわりと好きなんだけど、書いている内容が好きになれない、そんな感じなのかな、と思った。
エロスつかれるよエロス。

(06/2/1)







  蝶々の纏足  うな

蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)
山田 詠美
新潮社


 
またエロスで文学な中篇。
瞳美には美しい幼馴染がいた。彼女の名はえり子。
品位ある家に生まれ、美しく、人を虜にする術に長け、だれからも愛され、自分を親友と呼ぶ少女を、しかし瞳美はいつしか厭い、憎み始めていた。
彼女が、自分をしばりつけているのだ――

だからさあ、なんでこのテーマでエロスなんだよ?
いや、性への目覚めが関係を壊していく、というのは、いいよ。わかる、それはいいよ。
でもなんで冒頭からエロスなんだよ。
おまえ、単に自分のモチベーションあげたかっただけちゃうんかと。(気持ちはわかります)

これね、いや、文学だからなのかもしれんがね、えり子の見せ方が、もうまったくもって間違っているとしか云えない。
本来、もっとえり子を「えり子……なんて恐ろしい子!」と思わせなけりゃいけないだろうに、主人公の方が、よっぽどひどく見える。
なぜだ。肉食系だからか。おれが苦手な肉食系だからか。

とにかくね、全然ね、主人公がえり子にしばりつけられているように見えない。それっぽいエピソードも一つしかなかったし。
例えば、これを漫画家の山岸涼子が書いたとしたらね、もっとえり子をねちっこくいやらしく書いたであろうし、主人公をもっとみじめにした。
で、そのうえで最後に男のこととかドバーっと流して、えり子もかわいそうだったのかもなあ、程度の余韻でおわらせる。その方がよっぽどまとまって読みやすかったと思う。
まあ、山岸涼子の場合は、自分の男性関係や、男の趣味と向き合うことができなくて、それで簡単に流してしまう人なので、ある意味山田詠美の対極にいるわけなのだけれども。

でも、やっぱり、うまいところは、うまい。
うまいのはいいけど殴りたくなることもある。

 彼への欲求を紛らわせるために煙草をふかすことを覚えた。

とか、その楠田恵理子ヘアーに菩薩掌のひとつでもきめてやりたくなる。

それにしても、なんでどうしても肉食系なんだ?
日本人の高校生だろ? 青春しちゃおうよ。
身体以外で話すことがないとかやめろよ。

いやー、やっぱ詠美先生は苦手かなー。
おれ、エロくなってる女、苦手なんだよなー。
飲み会とかでも、エロくなってる奴とか、気持ち悪いから離れるもんなー。
なんだろうね、どうしても女の人って、エロくなるとねっとりしちまうよな。
男だとさっぱりエロの人もいるのに。
そもそもSEXをエロスのほとんどだと思っているやつって、嫌いなんだよなあ。カラオケで椎名林檎とか倖田來未とか歌う層?
いや、べつに彼女らはSEXがエロスのすべてだって云ってるわけじゃなくて、それ以外のことでエロスを表現するのに敗れて、しかたなくわかりやすいアレでやってるという言い方も出来ますけれど。
そういうのに乗せられる「あたしも大人の女」みたいなのが本当にキモイ。
まあ、業界の乗せる乗せられるはどっちもどっちの勝負なんで口出しする気はないですけども。

ま、詠美はいいよ(ホントはよくないけど)これだけ徹底してやっているんだから、本当の肉食系なんでしょう。黒いし。
ただ、本当に、そんなに肉食の人って、いるの?
おじさんはそこがわかんないなー。

(06/2/9)







  色彩の息子  うな∈(゚◎゚)∋

色彩の息子 (新潮文庫)
山田 詠美
新潮社


 
短いのがいっぱい入った短編集。恋愛もの中心にちょっとリリカルな感じで。
これうな印かなあ? と思いつつ、でもまあ、いっか、ととりあえずうな印。


★『陽ざしの刺青』
妻子ある男とお互い合意のうえではじまった遊びの肉体関係。
しかし、男は次第に本気になってしまい……
えーと、これなんてエロゲー?
いつもの詠美先生でした。やり過ぎ注意。


★『声の血』
若い継母と肉体関係をもってしまった浪人生の話。
実写なら、若い頃のジュリーにやってもらいたい感じですね。
悪くないです。


★『顔色の悪い魚』
恋人をなくして悪戯電話ばかりかける女の話。
これは、あれか。中島みゆきのトークみたいなものかね?
地味にまとまってわるくはないですよ。


★『高貴なしみ』
どん底だから底抜けに明るい主人公と、選ばれたものの輝きにみちたその親友。
ある日、親友は同じほどに輝く女に恋をしたのだが……。

これは、いいね。
主人公がなかなかにトリックスターで、傍若無人で、そのくせ、一番傷ついているのが彼だってわかる。
詠美先生の中では一番JUNEっぽい。


★『病室の皮』
人に嫌われないために、異常に高い自尊心を隠し、いい人として過ごしてきた主人公。
しかし、親友に恋人が出来たとき、その封印した自尊心が蘇り、「YOU! 悪い子になっちゃえYO!」と囁きだす。

この、わりとよく出てくる、自尊心がたかいがゆえにいい人ぶる、という設定、なまじ心当たりがあるだけに、書き方にリアリティーねーなーとか思っちまう。びんみょ〜☆


★『草木の笑い』
クラブで出会った女が精神的マゾで、ちょいサドのおれとあいつは一目ぼれ。
そんなわけで、天国までいっちゃうプレイをしちゃったのだ。
すいません、あらすじ書くのだるいです。

ここのあたり、一目ぼれで解決するなよ、と思ってしまう。
詠美ちゃんの書くところの一目ぼれって、要するに、セックスの相性がいいのが一目でわかったってこと?ソコガワカラナイ。


★『白熱電球の嘘』
本当は裕福なのに、悲劇のヒロインぶるのが好きで、どこに行っても嘘の身の上話を語る主人公。
ある日、恋に落ちた(また一目ぼれかよ)彼は、彼女の貧しさなんか気にしないと云うが……

なんか、ちょっと痛快な面白い話ですね。
すこしひねった少女地獄みたいな。
悪くないぜ?


★『ヴァセリンの記憶』
なんとなく女とつきあって結婚寸前までいったけど、昔一度だけ誘惑された男のことが忘れられなくてプレイバックする話。

こういうのはさぶにでも載せよう、な?(偏見)
つーか、これ、単にノンケが同性愛者であるということを自覚する話だよね。
そのさい、やられちゃったりして経験で気づくのではなくてあくまで自主的に気づくあたり、SEXは自分から楽しんでやらなくちゃ的な詠美先生らしさがある。
詠美先生ったらほんとにSEXが好きなんだから、もう。


★『雲の出産』
おれたち都会のイケテルやつらが、クラスのイケテナイ女の子を敢えて連れまわして、その気にさせちゃって嘲笑おうぜ! という話で、ごめん、オチにいまいち納得がいかん。
そこまで鈍感じゃねえだろ、みんな。なんか変だろ。
でもエグくて嫌いじゃない。


★『埋葬のしあげ』
大金持ちの三男のぼくは、兄弟で唯一のできそこない。
今日も鬱屈として、邸内を歩き回るのだ。

えーと、なんかエロ漫画でよくある雰囲気だよな。
これでこのお手伝いさんとやっちゃって「お坊ちゃまには私がいます!」みたいな話にすれば、エロ漫画雑誌をひらけばよく載っているお話だよね。
でもここでは敢えてやらない。それが詠美イズム。
まったく憎い奴だぜ!


★『黒子の刻印』
双子なのに、とても美しい妹の影にかくれて、陰鬱に生きてきた主人公。
双子を見分ける刻印としての巨大な黒子。この黒子さえなければ……
みたいな美しい妹と醜い私の話で、いやあ、どうだろうね。

双子テーマの短編は、どうしても萩尾望都の『半神』を思い出してしまうし、そしてまた、出来をもって『半神』を越えるのは、限りなくむずかしいと思うし、だから、この作品のできが云々ではなくて、『半神』って、短いのに泣けるよねっていう、そういうお話。


★『蜘蛛の指輪』
浮気相手のところに入りびたり、帰ってこない父のため、いつしか気の狂ってしまった母のお話。

話としては、凡庸ではあるが、ラストの情景、蜘蛛の糸で失ってしまった指輪をつくる母の姿のイメージは、美しい。
ゆるやかな狂気をつきぬけ救済されたことが、それだけでわかる。
あと、昔よく、糊で糸をつくって、指に巻きつけてサナギみたいにしていたことを思い出した。
あれ、なかなかいいよ?
どうでもいいけど、詠美ちゃんの話って、あんまりホテルいかないのな。
基本的に男の部屋でするの。
いやあ、初体験でその気のカップルが、わざわざ母親とお手伝いさんのいる家で鍵もかけずにするかあ? と思ったが、詠美ちゃんは鍵なんかかけないのだろう。
がんばれ、詠美!


総評すると、リリカルつよめで、なかなか面白かった。
ページ数すくないから、エロシーン短いし。

(06/2/22)







  ラビット病  う

ラビット病 (新潮文庫)
山田 詠美
新潮社


 
なんかいつもの山田詠美の。
いつも薄汚いカッコしてる、大金持ちできまぐれでバイオレンスでエロスな日本人の女の子と、朴訥でいい人で愛に生きていて包容力があってやっぱりエロスな黒人のバカップルがただひたすらといっちゃらいっちゃらする様子をほのぼのちっくに描いた作品。
べつにバカップルのいちゃつきは嫌いじゃないが、ちょっとそういうシーンばっかでゲップが出た。

(06/4/22)










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