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栗本薫 1984年


  グインサーガ外伝5 時の封土  うな

時の封土―グイン・サーガ外伝(5)
栗本 薫
早川書房




グインの外伝の5。初の短編集。
『湖畔にて』
『風の白鳥〜レムスの恋唄』
『時の封土』
『白魔の谷〜氷雪の女王再び』
『樹怪〜黄昏の国の戦士』
5篇収録。

まあ、面倒くさいのでそれぞれのあらすじとかは飛ばすし、正直、あんまりおぼえていない話もまざまざ混ざっているので、ごまかしごまかしいきますが、うん、無難に面白いですよ。
グインで普通に読める短編なんて、この時代のこいつらしかないわけだし、ちょうどいいことに、いろんなキャラの、いろんな時代のはなしが、そこまで感情過多にならずに描かれているので、グインの入門書としてはいいのやもしれぬ。
まあ、これで入門されても裏切られた気持ちでいっぱいになるだろうけれどさ……






  花陽炎 春の巻(中島梓)  う




短歌集。
ごめん、これ、この間、立ち読みしただけなんだ。
しかも短歌だしね。栗本先生が短歌。
ほっとくとどこまでても続ける栗本先生が短歌。くけけけけ。

まあ、そうですね、
なんか中井英夫とかみたいな。
角川春樹の俳句みたいな。
やたら退廃的で自分の世界に入っちゃってて。
余技としかいいようがないですなあ。
そもそもおれに短歌読ませてもねえ。
短歌好きな人の感想求む






  ぼくらの世界  うな

ぼくらの世界 (講談社文庫)
栗本 薫
講談社




現代ミステリー。ぼくらシリーズ第3弾にして一応の完結篇。
いままでの事件を本にしたらデビューすることになった主人公の薫くんが授賞式で遭遇する殺人事件のあれやこれ。
普通。
もうこれでいいっしょ?






  伊集院大介の冒険  うなぎ

伊集院大介の冒険 (講談社文庫)
栗本 薫
講談社




名探偵・伊集院大介シリーズ。
シリーズ初の短編集。
『殺された幽霊』
『袋小路の死神』
『ガンクラブチェックを着た男』
『青ひげ荘の殺人』
『獅子は死んだ』
『鬼の居ぬ間の殺人』
『誰かを早死させる方法』
の七編を収録。

いや、これは出来がいい。
出来がいいというか、とてつもなく無難な出来。
まず読みやすく、入り込みやすく、オチが毎回ちゃんとしており、いずれもが現代社会の病理をかるく掬っておきながら、説教臭くなったりせず、あくまでエンターテイメントに徹し、読み味爽やか、しかし考えさせられることは考えさせられる、そんな作品が揃っています。

この伊集院大介シリーズ、このノリでゆっくり順調にあと十年もやっていれば、 マジで第二の山村美紗となり、テレビシリーズの華となることも可能だったと思うんだけど……
栗本先生の性癖がそれを許さなかったんだよねえ……
と、この辺についての言及は後年の天狼星シリーズの項にゆずるとして。

個人的にこの短編集の白眉は『獅子は死んだ』と『袋小路の死神』
この手の短編心理ミステリーの見本となるようお話。『獅子は死んだ』はタイトルもいい。
プロ作家としては申し分のない作品集。無難なミステリーを読みたい方は是非。
しかし、薫マニアとしては、薫ファイヤーが炸裂しないので食い足りないのも事実。
素人にしかお勧めできない。






  猫目石 上・下  うな

猫目石〈上〉 (講談社文庫)
栗本 薫
講談社




伊集院大介VSぼくらの薫くん(作者じゃなくてキャラクターです)という、栗本先生のミステリー二大名探偵を共演させた豪華作品。

あらすじ的には、なんか中森明菜みたいなお騒がせエキセントリックアイドルの別荘に、伊集院大介や薫くんが招待されたら案の定事件が起こって、一方その頃、薫君はアイドルと運命の恋に落ちていて、しかし彼女には周囲の黒い思惑がうごうごうごめいていて、結論から云うと「どうしてエレクチオンしないのよー!」みたいな、そんなお話。
嘘です。

まあ〜、なんだろうね、この「自作の人気キャラが夢の共演」という、あまり使えない、使っちゃいけない手段を使用しておきながら、結果としては「ごめんなさい」みたいな。
いや、ストーリーのおいしいところは薫くんに、探偵としてのおいしいところは伊集院大介に、という配分自体は間違ってないわけですよ。
ただねえ、やっぱりミステリーとしての弱さというか、設定の恥ずかしさというか、なんだろうね、芸能界ものやテレビ局ものでデビューした栗本先生だけれども、やっぱ、ちょっと恥ずかしいんだよね、業界物。
だから、控えめにしていただければね、うん。

また、この作品にはどうにもいけない部分があって、
それはぼくらの薫くんがこの作品のせいでキャラクター的に死んだ、ということでして。
現代っ子薫くんは、この作品以降、そのへらへらしたスタンスを取り得なくなってしまったわけで。
うーん、もっと地道にシリーズ続けてもよかったと思うんですがねえ。もにょもにょ。
ラストシーン、唐突に栗本先生の100%が発動。ぼく的には

こんな感じでしたけど、一般的にはちょっとひく感じでしたね、はい。
薫の本気はひく。ここ、重要だからメモしとけよー。
そんなわけで、力を入れたわりにはいろいろな意味で残念な作品かと。
いや、好きなんだけどね、ラストシーン。唐突過ぎて。






  吸血鬼〜お役者捕物帖〜  うな

吸血鬼―お役者捕物帖 (新潮文庫)
栗本 薫
新潮社




連作短編集。
美貌の女形・嵐夢之丞を探偵役に、江戸の町に起こった事件を描く捕物帖。
捕物帖って、要するに半七捕物帖とか鬼平犯科帳とかの、あれ。
ちなみに「おにへいはんかちょう」って一発変換できるんだぜ?

『瀧夜叉ごろし』
『出逢い茶屋の女』
『お小夜しぐれ』
『鬼の栖』
『船幽霊』
『死神小町』
『吸血鬼』
『消えた幽霊』
収録。

出来は無難。
普通にまあまあよくできた捕物帖。
夢之丞のキャラクターも、予定調和的ではあるが悪くない。
オチもそれなりにえすぷりが効いていて、このままシリーズ化したら、そこそこのものにはなっていただろうと思わせる。

が、このあとの二巻が大長編になってしまい、そして大長編であるがゆえに栗本先生の悪癖が爆発し、結果としてこのシリーズ自体がスパーキングしてしまった。
例えて云うなら、名探偵コナンが二巻目で組織との対決をはじめてしまったようなものだ。
もうちょっと長く続けても良かったんじゃない?
いや、コナンはさっさと組織と対決するべきだと思うけど。
そんな感じで、一作だけですが、捕物帖が読みたい方など、どうぞ。
でも捕物帖の需要って、ほかの作家で埋まってるよなあ。






  カナンの試練  うな

カナンの試練 (角川文庫―トワイライト・サーガ)
栗本 薫
角川書店




で、カローンの蜘蛛の続き。下巻。完結篇。
ちなみに書き忘れたけど、このシリーズの名前はトワイライト・サーガ。

基本的にはカローン〜と変わらず。
確か最後の方のだけデビュー後に書かれたんだっけな? とりあえず完結させるために。
で、その完結篇なんだけど……うーん、これが微妙でねえ。
いや、悪くはなかったんだよ、ページ数も適度だったと思うし。
ただね、ほら、前巻のときに書いたとおり、おれがこの話を読むにあたっての最大のモチベーションは「なんで二人は別れたのか?」だったから。
ゼフィール死んだのかな〜、とか、カルスが追放された、とか、ゼフィールがカルスを裏切った? ゼフィールが人間じゃなかったとか? みたいなことをいろいろ考えた身としては、その辺がべつにどうでもいい感じで「とりあえず」終わってしまったこのラストがどうにも消化不良のもやもやで。
「本当の完結篇となる三巻出せやコラ!」みたいな気持ちになった。
そんなわけでうな印なし。

このシリーズ、挿絵が天野喜孝なんだけれど、なにやら会心の出来だったらしい。
一巻がゼフィールの正面顔、二巻が横顔なっていて、三巻で衝撃の事実が発覚する予定であったらしく、薫に「三巻まだですか?」と聞いたらしい。
そういう意味も含めて、三巻が欲しかった。

まあ、そんなわけで。
このシリーズは、二巻という長さも適度なので、ほどぼとに重く、ほどほどに読みやすく、ほどほどにやおいなので、そういうところを望むファンタジー好きは一読をば。
和製ファンタジーの原点をしる意味でも。
まあ、本当は高千穂遥の『美獣』の方が早かったらしいけど、あれは売れなかったしべつに面白くなかったし。






  ゲルニカ1984年  うな

ゲルニカ1984年 (ハヤカワ文庫JA)
栗本 薫
早川書房




長編SF。
ジョージ・オーウェルの名作『1984年』へのオマージュというか、そんな作品。

『1984年』というのは、1949年に書かれた小説で、1984年の未来における、とある架空の独裁国家の姿を克明に描写した革命小説。
とにかく、情報統制言論統制思想統制が徹底して描かれており、全体主義の極限を描いて、全体主義の危険性を指摘した作品。だと思う。
ごめん、一応読んだんだけど、説明できている自信ない。

で、この作品は、その1984年が間近に迫った現在(当時のね)における、社会の恐怖を描いたSFホラーなのです。
ある日、ふとしたことから「日本では戦争がはじまっているんじゃないか?」という疑念にかられた主人公は、さまざまな人にその疑問を投げかけ、真実を調べる。
当然だれもが主人公を笑い飛ばし、信じようとはしない。
だが、それとはうらはらに、主人公の疑念は次第に確信に変わっていく。
そして誰かが、なにかが自分たちを操っているのだと思いこみ、恐怖におびえ、 自らの戦いをはじめるのだが……

「なにが起こっているのじゃないか?」
「自分たちはだまされているのではないか?」
「世界は滅びに向かっているのじゃいか?」
日常を暮らしながら、そういった恐怖に苛まれ、次第に常軌を逸していく前半。
なにげなく過ごしていた世界の狂気を描きだす中盤、
は、名作。

イビルスピリットとか出てきて、あれな感じになる終盤は、ちんぷいちんぷいそんでもっておねがいちーんーぷーいー。
ラストは、まあ良い。

でも、終盤の展開で「はぁ?」となってしまうことうけあいなので、ほどほどの期待をもって読んでください。
前半はほんと面白いんだけどねえ。
軍事評論家とかの描写が面白くてねえ。馬鹿にしくさっていて。

なにげに力入れて語りまくっているあとがきが一番面白いかもね。
そんなわけで、途中から陳腐になってもめげない、という人は是非。
面白い部分は面白いんだよ?






  魔境遊撃隊-第1部、第2部  う

魔境遊撃隊〈第一部〉 (ハルキ文庫)
栗本 薫
角川春樹事務所




秘境探検物。
ぼくはいま、安心してこう云うことが出来る。
栗本薫中期における随一の駄作である、と。

ミステリアスな少年・印南薫に導かれて、人跡未踏の地に挑む作家・栗本薫くん御一行は……
というだけの話ですが、まず、案内役のミステリアス薫に魅力がない。
どう魅力がないのかと云われても、あまりににもステレオタイプに過ぎるだとか、 中身が見えなさ過ぎるだとか、印南なんて苗字にされたら『摩利と新吾』にしか見えねえよ、とかもういろいろあるんですけど、要するに、ストーリーと絡んでこないから、ただ無駄にミステリアスなだけで面白くないんです。
ほかのキャラにいたってはまったく覚えていないので論外です。
隊とか云って、ほかにキャラがいたかどうかも覚えていない空気感もダメです。

また、秘境物なのに、文体が軽めの一人称なのも、きっとなんらかの狙いはあったんだろうけど、失敗だと思います。
クトゥルーをちゃらっと出したのも失敗だと思います。
ここの遺跡からグインのヒントを得ましたというオチも恥ずかしかっただけでした。

そもそも、想像外のものを描かなまくてはならない秘境物は栗本先生には難しかった。
そして結果も失敗に終わった。
登場キャラクターの歴史でもなかったことにされている辺り、しくじり具合が見てとれますね。
だからこう、なかったことにしてあげてください。お願いします





>
  火星の大統領カ−タ−  うな∈(゚◎゚)∋ 

火星の大統領カーター (ハヤカワ文庫JA)
栗本 薫
早川書房




SF短編集。
早川ポケットミステリで出して欲しくて書いた本。
なので古典名作SFへのオマージュとパロディに満ちています。

★『火星の大統領カーター』
バローズの『火星の大元帥カーター』のパロディ。
大統領選挙でレーガンに敗れたジミー・カーターが、気がつくと火星にいて大元帥カーターと遭遇して云々というギャグ小説。
当時は気にせんかったが、元大統領をこう書くのってけっこう失礼だよね。
中身は、まあ、それなりにわらえてそれなりに面白いです。


★『エンゼルゴーホーム『』
フレドリック・ブラウンの「火星人ゴーホーム」のパロディ。
幽霊時代の項で書いたからパス。


★『ロバート・E・ハワード還る』
ハワードの『コナンサーガ』のバロディ。
泥酔した大学生が、ある夜、家に連れ帰ったのは、なんとあのコナン・ザ・グレートだった。
みんなは興奮して喜ぶのだが、次第に蛮人コナンをもてあまし……

これ、とても好きだね。
せっかくの憧れの大英雄をもてあましてしまう現代の若者。
そう、我々は英雄にあこがれ、壮大な物語を夢見るが、いざその場に立ち、かれらを前にすれば無力にとまどう俗人に過ぎないのだ。
そこが悲しくてとても良い。
車の列の向こうへ消えていくコナンの姿はまさに美しき蛮人。


★『ナマコの方程式』
ゴドウィンの『冷たい方程式』のパロディ。
冷たい方程式のストーリーっていうのは、ある宇宙船に少女が密航してくる。
しかしギリギリまで燃料計算されたその宇宙船では、わずかな質量オーバーでも燃料不足になってしまい、墜落してしまう。
少女は若く美しく、密航には事情があったのだが、宇宙空間の冷たい方程式は彼女を宇宙に捨てるしか助かる方法はないのだと告げていた。
みたいな話。

で、この話は、その密航者が少女ではなくて巨大ナマコでした、というドタバタパロディ。
だから、そんな話です。


★『最後の方程式』
これ、なんのパロディなのかね? 冷たい〜に加えてハインラインっぽくはあるけど。
かつて一つの革命があった。
このうえもなく美しく理想の世界を築くと思われたその革命は、しかし一人の悪辣な独裁者を生み出しただけに過ぎなかった。
かつてその独裁者の右腕として革命に尽力し、いまはかれへの反逆罪で追放され辺境の貨物輸送をして生きるだけの老ヤンの船に、ある日、一人の青年が密航してくる。
彼は独裁者を倒すために、革命のリーダーを救いに行くのだという。
しかし、この船には余剰燃料などなかった。
どちらかが船外に出なければ船は墜落するのだが……

これも名作。
若き革命家と、かつて革命を起こし現実に敗れた老人の間で、美しき平等な世界をのぞむ理想と、死にたくないという現実が交錯しつつ、お互いの距離を測る二人の心理サスペンス。
純粋にドキドキするし、全編を彩る老ヤンの重い絶望が素晴らしい。


総じて面白いです。
なによりSFへの愛に満ちています。
オマージュ作品としては一級品かと。






  美少年学入門(中島梓)うな∈(゚◎゚)∋

美少年学入門 (ちくま文庫)
中島 梓
筑摩書房




JUNEとかJUNEとかJUNEとかに連載されていたエッセイ。
つうか、当時のJUNEは特に意味はなくても、栗本用ページみたいなのが用意されてた印象だからなあ。

で、これ。
美少年へのこだわりとはかくあるべし!
ただ若けりゃいってもんじゃない! ちょっと顔がよければいいってもんじゃない!
美少年とは生き様なのよ! シチュエーションなのよ! 一瞬の輝きなのよ!
どうしてエレクチオンしないのよ!
と梓先生が、今で云う腐女子としかいいようのない態度とテンションで、面白おかしくやおい事情と萌え語りを繰り広げています。

ごめん、梓、これ面白い。すごく面白いですよ。
でもとうていほめられた内容じゃねえなあ、みたいな。

「たのきん?ただのガキじゃん」と云ってたのきん萌えの腐友達に総スカンにされたり「若い頃はレズも嗜んだ」みたいなこと云いだしたり「結局、私が自己投影するのに都合がいいんだろうねえ美少年って」とゲロッたり、いい意味で浅い言動の数々、読者を小ばかにしたような言葉の数々が、しかしやおい仲間という同類愛が根底にあるため、非常にあたたかい。
むしろなまあたたかい。ぬるぬるしてる。いやらしい。この変態め。

だから、その、昔の腐女子事情に興味のある人ならどうぞ。
入門というだけあって腐女子がどういう風に萌えていくのか、 そのメカニズムの一端を知る意味でも、相互理解の役に立つかも知れないので、
キモヲタの人たちも読んだらどうか?
そしてお互いに罵倒しあうのをやめてはどうか?
好みのタイプがちがうだけでまったく同類なんだし。

などと、キモヲタ資質とやおい資質の両方を兼ね備える私などは思ったりする。







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