大長編やおい小説。 これ、わりと封印してたんですけどね。 3巻までが超名作で、この4巻からずっこけたから、あんまり読み直さないようにしてた。だから、わりと内容がうろ覚えで、ずっとエチーしてたような印象だったんだけど、いや、これは誤解だった。思ったよりエチシーン以外も長かったし、出来もそんなに悪くはなかった。 でもまあ、劣化はすごいね、かなり。 なにが一番厳しいかって、やっぱ島津さんの扱い? 透が「島津さんは前に云っていた」とかいって、島津さんらしからぬ、べたべたで甘ったるい言葉を連呼するんですよ。 おれの島さんはそんなこといわねえっつーの! みたいな。 ちょっと前の巻で、酒のんで泥酔したふりをして、なおかつ遠回りな言い方でしか一世一代の大告白をできなかった島さんはどこに行ったんだっつーの。 ま、それはともかく。 前半、錯乱した風間さんを説得するんだけど、この人がまー、うざい。 そもそもこの風間さん、インテリで金持ちで大人の一流作曲家だったけど、良の魔性で狂ってしまうって人なのね。 でも、狂う前からインテリにも金持ちにも作曲家にも大人にも見えないのですよ、これが。だから魅力がないのね、ホントに。 で、ここでいいがかりの痴話喧嘩してぐずぐず泣いて死ぬの殺すの、ほんともう、風間さんうざい。 この風間さんの魅力のなさのせいで、良が余計に薄っぺらくみえているんだろうなあ。 中盤、透が釈明記者会見をするんだが、ここでの透の役たたずっぷりがけっこう好きだ。 昔の自分の発言を持ち出されて「昔のことだもん」「人は変わるんだもん」「あんたらおかしいんだもん」と大人気ない感情論の連発。心底つかえねーって感じがある意味たまらんです、ハイ。 で、後半のエチシーンに関しては、まあ、どうでもいいでしょう。 作者的にはこの四巻で二人が結ばれて、話が大きく進んだつもりなのかもしれないが、自分的には数年放置されてたったこれしか話が進まないってのは、なんかイライラしたね。そんでもって続きはまた数年後だし。 でもまあ、読み直してみたら、嫌いではなかったよ。いいんじゃない?良と風間さんが深刻にうざいけど。
大正浪漫シリーズ第四弾。ミステリーなの? 一作目に出てきた少年カップルが、また蔵から戦時中の日記を発見して、一族の古株であるお婆ちゃんに話しを聞きにいったら、親族でカップリング妄想をしていたという話を長々と聞かせられる話。 この作品が仮に誰かにささげられたものだとしたら、間違いなく森茉莉であろう。 腐女子としか表現のしようがないお婆ちゃんが出てくるのだが、どう見てもお茉莉です。本当にありがとうございます。 えーと、わりとひどい作品だと思うんだ。文章も崩れ気味だし。 ぐだぐだぐだぐだ、どうしょーもない話を続けてたと思ったら、急に殺人事件が起こって、たちまち解決して。これはもう、ひどいミステリーですね、と言いたくもなる。 でも。 傍観者に徹していた腐女子が、自分もまた物語の中心人物であったと気づくくだりが、なんともおかしいと云うか、お婆ちゃん、天然でプリチーである。 生きているかぎり、傍観者でなど有り得ぬのですな。 なのでちょっと評価底上げ。底上げしてこれなんですけど。 つうか、主役のホモカップル、ちょっと深刻にキモいよね。
ミステリー。伊集院大介シリーズ。 あらすじ。 自分を題材にしたホモ同人誌が出版されてることを知った大介は仰天しながらも興味津々にやおい業界について勉強したりしながら、ある女性漫画家殺人事件を解明するのでした。 転換点はこの辺かしらね。 なにがっていうと、アトムくんがなんとなくアレな子になってしまったのは。 いや、正確な転換点は通信教育講座なんだけどさ、それを読んでいなくてもなんとなくこの辺から 「アトムくん、うざくない? 助手のくせにちょっと伊集院さんに冷たくない?」 と思うようになりましたね。まだなんとなくの段階ですけど。 あと晶もずいぶんとどうでもいいキャラに成り下がってしまいましたね、この辺で。 ま、そんなことについてはどうでもいいとして、だ。 この作品自体は、実はけっこう好きです。 やおい少女たちのあり方への認識が古いとか、ちょっとメンヘル多すぎとか、『ぼくらの気持ち』の焼き直しかよ、とかそういうのはあるんですけど、こういう題材で、こういうホワイダニットを書けるのは、いかにも栗本薫的で、わりと良い感じです。 ただ、なんつうんですかね、なまじ自分も同人に足突っ込んだから書いたんでしょうけど、九十年代後半以降の肥大化した同人市場に対しては、ちょいと理解が足りないというか…… 要するに古い、んだな、同人作家や購読者に対する認識が。 それを、ま、しゃあないと目をつぶれば、けっこう面白い題材でオチの作品なので、けっこう読めます。 |