タイトル | 評価 | 一言メモ |
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん ―幸せの背景は不幸 | うな∈(゚◎゚)∋ | ヤンヤン小説 |
★ | うな | ★ |
八年前、誘拐されて監禁されて虐待を受け、すっかり壊れてしまった女子高生・御園マユ。 彼女が子供たちを誘拐していることを察した僕は、なしくずし的に彼女と同棲することに。僕と彼女は、誘拐犯の下で一緒に虐待を受けていた仲なのだ。 彼女がなんで誘拐したのかもわからないままに、なんとなく子供たちの世話をする僕だったが、街では連続殺人が起きているし、自分は嘘しかつけない人間で、担当医の様子はおかしいし、変な刑事があたりをうろつきはじめて、どうしたものか困るのであった。 はいはいヤンデレヤンデレ。 と思ったら、これが意外に良かった。ヤンデレっつうかヤンヤンだった。 なんでもかんでもすぐ「嘘だけどね」とつける主人公はどうみても西尾維新の戯言シリーズだし、語り手が殺人鬼である、という書き口は『月姫』ないしは『痕』で、つまりは完全に講談社ファウスト系の厨二作品の影響を受けまくりなんだが、ただのパクリではなくてちゃんと自己流の作品になっていた。 なにをいうにもやはりまーちゃんがちゃんと壊れていたのが良かった。 外ではいつも無表情。みーくんの前ではいつも幼児退行。机に顔面からつっこんで寝、子供に本気の暴力をふるい、理由もなく誘拐したまま興味を無くして放置し、帰るなり「エロイことするぞー」と叫んで寝、目の前で飛び降りされてもすぐに忘却し、掃除が出来ずまっすぐ歩けず夜中に叫び一晩中ドアの前で立ちつづけ、と全編通して安定して壊れてる。 ただの可哀想な子、ではなく、ちゃんと壊れたどうしようもない子になっているのがいい。こういう子にヤンデレられたい気持ちとかかわりたくねーって気持ちが拮抗するようなバランスが良かった。 もちろん、主人公の虚言癖バリバリの語り口も(西尾維新まんまじゃねーかという気はするが)読んでて面白いと同時にストーリーを錯綜とさせるのに一役買っており、仕上がりとして「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」としかいいようがない出来になっていた。 ミステリーとして見たときも、一発でわかるありがちな叙述トリックであるが、変なところがけっこう細かくて、ちょっと感心した。 本格派のミステリーとしては評価できないが、変化球ミステリーとしては及第点の出来かと。 一冊としてのまとまりもいいし、それでいて次にも自然につながる感じだったので普通に続きも読んでみたいと思う。 なんでメフィスト賞に応募せずに電撃に応募したのかは謎だが、電撃的にはちょうど求めてた人材だろうなあ。 (09/4/17)
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