タイトル | 評価 | 一言メモ |
ブラックロッド | うな | デビュー作。ケイオスヘキサ三部作。いきおいはある。 |
ブラッドジャケット | うな∈(゚◎゚)∋ | ケイオスヘキサ三部作。変にカッコイイ |
ブライトライツ・ホーリーランド | う | ケイオスヘキサ三部作完結篇。意味不明 |
IX(ノウェム) | うな | 武侠小説。ザ・中絶 |
サムライレンズマン | うな∈(゚◎゚)∋ | レンズマンシリーズの正統派新作 |
ソリッドファイター | うな | 続きを書いても出してもらえないという悲劇 |
冬の巨人 | うな | 設定はと前半は完璧 |
蟲忍(古橋秀之&前嶋重幾) | うな | ある意味ラノベの理想形 |
ある日、爆弾が落ちてきて | うな | 中途半端な短編集 |
SFラノベ。 ケイオス・ヘキサ三部作の一作目で作者のデビュー作。 とにかくテンションが高く、造語とルビ振りの嵐で、次から次へとけったいなキャラクター、設定が登場し、そしてまたものすごい死んだり殺されたりする。 1P目から最後の一文まで止まることのないこのテンションの高さは、たしかに特筆できる。 文章にも設定にも作者のオリジナリティーは感じる。 サイバーパンクだけどオカルト、なんて街はなかなか描けるものじゃない。 が、ダメだ。 中高生時代なら、あるいはこの設定の濃さに魅了されたかもしれないが、どうにも物語自体でやりたいことの不在というか、だれを追って、何に愛を感じ、この物語を追っていけばいいのかまるでわからず、置いてけぼり感だけが募っていく。 もっとわかりやすく書いてくれてもいいんじゃないか?というのが素直な気持ち。 ダークヒーロー結構、救いのない物語結構。 しかし、存在の実感を得られなければ、ただの絵空事でしかない。 そんな浮ついた理想論はともかくとして。 一番まずかったのは、最後の最後までだれが敵だったのかわからなかったこと。 目的が不明瞭なため、物語が読みにくいったらない。 文章、設定が特殊なのだから、構成くらいはとっつきやすくするべきだと思った。 だって、これ、単純なエンターテイメントじゃないか。 わかりやすくしてくれたって、罰はあたらないだろうよ。 (06/9/2)
ライトノベル。なんか三部作の完結編らしい。 気合が入っているのはわかる。 でもごめん、正直意味がわからない。 いったいなにがしたかったの? 設定がいろいろ細かいのはいいけど、ストーリーの本筋ってなんなの? つうか完結してるの?本当に完結してるの? 父さんよくわからないよ。 (06/5/11)
ライトノベル。偽中国の武侠小説もどき。 えーと……これ単発ものじゃなかったの? あまりにも見事な構成。 才能溢れるが未熟な主人公二人の出会い。 かれらを導く師と兄弟子の登場。 不吉な敵の影。 突如訪れる故郷の崩壊。 はじまる逃走劇。 強大な敵の追跡と死闘。 敗北と束縛。 脱走、圧倒的な力で繰り広げられる師と敵との対決。 深まる主人公たちの絆と、二人の出生の謎。そして真の敵が顔見せ。つづく。 ここまででおよそ90〜120分。 ……完璧だ。完璧なまでの先行体験版の構成だ……。 「続きは買って確かめてね☆」という声が聞こえそうなほど、作品の魅力をわかりやすくつめこんである…… で、本編は? 本編なきゃダメだよ〜、みたいな。 まあ、そうねえ。わざとやってる胡散臭い四字熟語の必殺技の数々は嫌いじゃないし、テンポが必要以上にいいのも悪くない。 つうか、だからおれは本編を買ったつもりだったのに、なんで体験版なんだよ! アークザラッド1をやった時のような屈辱を感じたよ! ええ、ロンドは体験版で買うのをやめましたよ! でも今はむしろちょっと欲しいよ! 主人公が「少年の姿をした少女」であることがわかるのが作品後半なのに、表紙で完全に萌えキャラにされているのはどうかと思った。おかげで一発でわかったし。 いずれ本編が出ることを祈る。
長編SF。 超有名な古典スペースオペラ、レンズマンの外伝。 悪く言っちゃえば同人小説というか「ぼくの考えたレンズマン」みたいな話。 心正しき者にのみ授けられる正義の証レンズをもった銀河パトロールの戦士、レンズマン。 彼らの活躍によって犯罪組織ボスコーンが壊滅してから十年。 ボスコーンの残党は各地で活動を続けていた。 奴らと戦うレンズマンたちの中に、一際異彩を放つ最強の戦士がいた。 日本刀片手に単身乗り込み、神秘の技を持って敵を殲滅するその男の名はシン・クザク。 人は彼をサムライと呼んだ。 いや、これ面白いやん。 実はレンズマンってまったく読んだこと無くて全然知らなかったけど、こういう設定だったのね。変身ヒーローかと思ってたよ。 次から次へと飛び出てくる破天荒な設定と魅力的なキャラクター。 大味なようでしっかりと科学的な裏付けがあるっぽいSF設定。 実に魅力的なシリーズだ。そしてそのシリーズの魅力を伝えてくれる作品だ。 作者オリジナルのキャラクター、サムライ・レンズマンを主役としておきながら、 ストーリー展開自体はしっかりと本来の主人公キムを中心に展開し、本編で活躍したレンズマンたちも登場させ豪華絢爛。 四つの触腕を持つドラム缶型のリゲル人、キムの片腕トレゴンシー。 宇宙一の小心者にして完璧主義者、超次元的生物バレイン人のナドレック。 龍の姿をもつ空中戦闘のエキスパート、上帝族狩りのウォーゼル。 肉弾格闘の達人ヴァンヴァスカーク。 かれら既存のキャラたちに、オリジナルのキャラたちが実に自然にまぎれている。 作者がシリーズを愛しているからこそだろう。 オリジナルのキャラたちもまたかれらに負けず魅力的だ。 絵に描いたようなツンデレヒロイン、キャット・モーガン。 正義感に燃える新人レンズマン、ビル・モーガン。 通信能力に優れたくじらのレンズマン、ジョナサン。 剣と柔術の達人であり、精神攻撃にも優れた最強のサムライ、シン・クザク。 なによりも圧巻なのは、今回の敵、デイルズだろう。 ぶっ壊れた思想でひたすらに力を求め裏切りを続け、破滅思想のもと地球を壊そうとするその姿勢は、ベタながらもイカれていかしている。 この作者の作品で一番楽しめた。 おそらく正統派のエンターテイメントだったからだろう。 レンズマンシリーズを読みたくなるほどには魅力的な作品であった。 (07/3/14)
ラノベのなんかこう、ゲーム小説みたいなの。 大ヒット格闘ゲーム『アルティメット・ソリッド』に青春を賭けるスダケンは、製作者とも知り合いでデバックにも参加している筋金入りの陽気なオタク。 ある日、ひょんなことから学校の名物女教師タケちゃんのモーションキャプチャーをとってみたところ、なんと彼女は幻の古武術の達人ということが明らかになったのであった。 そんなこととは全く関係なく、スダケンはポリゴンキャラの胸を揺らしたり熱血野郎と喧嘩したり不良にボコられたり不良をゲームでぼこったりしているのであった。 なんか一冊完結かと思ってたら「続く」だった。 しかも今調べたら続刊を出てないとか言われた。そりゃないだろ。 さらにもっとよく調べたら、著者稿はちゃんと完結まで存在しているのだが、本作が売れなかったので出版されなかったとか。せつねーな、せつねーよ。 スピード感があって、案外面白い。 あからさまにバーチャファイターを意識した架空のゲームは、有り得たかもしれないバーチャの進化型にも思え、なかなか興味深い。今作が書かれたのは97年。まさしくバーチャの絶頂期か。 格ゲーのセオリーもなかなかわかりやすく説明されており、題材の味を生かしている。 どこからどう見てもごくせんというかヤンクミというか、とにかくそれにしか見えない万年ジャージ姿の超人女教師タケちゃんのノリもよく、他の脇キャラもみな勢いがあるので非常に読みやすい。 ただ、何故だろう、これだけゲーム内容も詳しく書いてあるのに、ちっともゲーム自体が楽しそうに見えないし、作者がゲーム好きにも見えない。 文章は軽く主人公もはしゃいでいるのが、逆効果になっている気がする。 なんというか、馬鹿にしているような気がするんだよな。そのはしゃぎ方が。 インテリが無理にテンションを上げているみたいな、空しさというかなんというか。 この作者がいまいちヒットしないのは、結局その「馬鹿にされているっぽい」という感覚だと思うな。読者は察しちゃうよ、そういうの。作者と体験を共有している感じがないんだよな。どの作品も。ペーパーバックのエンターテイメント作家としてがんばっていますよ、という割り切った姿勢が素晴らしすぎてさ。 なんでこう、人間という生き物は舐められてるという感覚にはあんなに敏感なのだろうね。 でもまあ、今作が売れなかったのはそんな根の深い部分じゃなくて、イラストの石田走のせいだと思う。もうものすごい勢いで萎える。 石田先生は昔、コミックビームでファイティングバイパーズの漫画を描いたりもしていたのだが、ほんとにもう、全体的にあの漫画には萎えたなあ。ぼくの仁義衆蛮が余裕であっけなく負けるし。ぶつぶつ。 (07/5/15) (追記・2008年に完全版が出て完結したらしい)
SFなのかファンタジーなのか。 終わることのない冬の時代。 その世界の中を、七日で一歩、一年で五十二歩進む冬の巨人ミール。 巨人の歩みは、すでに千年を数えていた。 人々はその巨人の背中に都市をつくり、巨人からもたらされる熱によって生活をしていた。 主人公の少年オーリャは、教授の助手として巨人と外の世界の研究を手伝っていた。 その研究の一環で気球で空に上がったとき、彼が見つけたのはなんと空を飛ぶ少女であった。 作者があとがきで「破壊と再生の寓話」と云っているんだから、まあそうなんだろう。 冬の世界をなにも語ることなく歩みつづける巨人と、その背中に住み着いた人間、という幻想的でありながらも力強いイマジネーションにまずひきこまれる。 ついで、聡明ながらも貧しく引っ込み思案で、しかし前向きな姿勢で人を魅了する主人公の正当派な魅力、彼を導くディエーニン教授やきまぐれなお嬢様など、オーソドックスでありながら短く的確に描かれたキャラクター像に作者の確かな力量を感じる。 ここにあるのは一つの純粋な「物語」で、だからこそ、けれんのない読みやすく簡潔な文章がもっともふさわしいのだが、それを実によくわかっているし、よくこなしている。 半分の120Pをよむ終わるまでは、感心しつつ楽しく読めた。 が、後半、決して拙いわけではないのだが、前半のペースに比べると、どうにも無理矢理話をまとめようとしている感じがあり、いささか窮屈さを感じた。 あとがきによると、どうやら半分書いてから、残りの半分を書き終えるのにずいぶんと間が空いたようで、きっとそのせいだろう。物語を終わらせることが第一義になってしまったのではないかな? せっかく広げた人間関係があまりうまく機能しないままに終わってしまった感があるのはいささかもったいない。 とはいえ、冬の巨人というイマジネーションは素晴らしいものがあり、よく出来た小作品、佳作であることは間違いない。 これくらいわりきって、神の視点から物語を操ったほうがこの作者の悪い意味での特徴がなくなると思う。作者と読者の距離が近いという、ライトノベルの特徴は、この作者に関しては悪いほうにしか作用していない。売上的に伸び悩んでいるのは結局そこだろう。 作者がサービスしていることを、あまり露骨に感じさせるのは、逆に反感くらうよ。 (07/12/18)
ラノベ。長さが説明しがたいが、中篇くらい? 宇宙より落ちてきた神木《七星樹》により人も世界も変わり果てた。 朽ち果てた世界で猛威を振るうのは、蟲の力を身に潜めた超常の忍――蟲忍たちであった。 抜け忍となったくの一、辻疾風の阿音をめぐって、いま蟲忍同士の戦いが始まる。 阿音の狙いはただ一つ。妹の仇であり最強の蟲忍でもある宿敵、縁隈を倒すことだけた。 だが二人の戦いはやがて星の命運を巻き込むものとなり…… テンションだけで読ませる作品。 まず挿絵が異常に多い。3Pに1Pくらいは挿絵の感覚だ。いくらラノベでもここまで思い切った作品はない。つうか絵の人の仕事量的に無理。 なんでこんなことが出来たのかというと、元は漠然とした設定を挿絵の人が考えていたのを、文章の人がザックザックと構成しなおして、いろんな意味で無理矢理一つの作品にしたてなおしたらしい。 だからというと、設定は絵描きらしく自分の書きたいもの優先というか、整合性とかストーリーの必然とかまるでなしの妄想おもちゃ箱状態。このまま放置していても作品として形にならないことは明々白々。 そこに他人の手が入ったら、普通は別物になるか原作を尊重し過ぎて支離滅裂になるかのどちらかだが、それを生かさず殺さずで形にする古橋秀之の才が見事。 古橋秀之は、たぶん必要以上に才気ばしりすぎている。自分はマニアでありながら、器用にすぎる。だから、マニアに受けてもヒットはしない作品ばかりになる。それで一般受けを考えると、今度はやり過ぎてしまって逆にダメになる。 読者自身が思っているよりは読者はバカだが、作者が思っているよりは読者は利口なのだ(と、3DOのゲームでゆってた) 古橋秀之は、きっと不特定多数の、声なき読者の頭の度合いがうまく測れていないのだろう。それで、小器用にふるまおうとして失敗ばかりをする。 そんな古橋だからこそ、明確に尊重すべき相手がわかるときには、その才気を存分に発揮する。デモンベインのノベライズにせよ、サムライレンズマンにせよ、原作の持ち味を崩さずに自己の持ち味を取り入れるという難行を鮮やかにこなしている。 才気があるからこそ、手綱が必要な人なのだろう。 この蟲忍も、あとさきも考えていない原作をよくもまあここまでハイスピードで読者のツッコミを待たず許さずの作品に仕上げたものだ。 文章が挿絵のテンションをあげ、挿絵に頼ることにより文章のテンポがさらに加速している。 絵と文章の価値がまさに対等。 これこそが、ラノベの理想系であるのかもしれない。 問題は、やりたがる絵師も小説家も少なそうなことだな、こりゃ。 ストーリー自体は、ゲーム世代の妄想という感じで、異常なテンションとテンポ以外は特に見所はなかったけど、勢いで全部ごまかせている。 (08/5/21)
空から降ってきた女の子は初恋の子にそっくりで人型爆弾 ★『ある日、爆弾がおちてきて』 記憶退行を引き起こすゴードン風邪に幼馴染が罹患 ★『おおきくなあれ』 死者が蘇り生前の一日をくりかえすのが当たり前の世界 ★『恋する死者の夜』 図書館で出会った幼女は神様 ★『トトカミじゃ』 毎日別のだれかに憑依する肉体のないクラスメート ★『出席番号0』 居室の窓に映ったのは六年前のこの教室 ★『三時間目のまどか』 爆心地に残ったのは、時間が凝縮した空間とそこに閉じ込められた少女 ★『むかし、爆弾がおちてきて』 読みやすいし設定が面白い。 けど、文体が軽すぎるせいか、状況の説明だけでストーリーが展開せずに終わってしまっている印象。 うーん、どれも長編にはならないが、この文体なら倍の文量があってもいいんじゃない?連載の都合上、そういうわけにもいかなかったんだろうけど。 『出席番号0』はキャラクターが、『三時間目のまどか』は設定が、『むかし、爆弾がおちてきて』はSFっぽさが良かった。 が、どうもがんばって萌えキャラをつくってくれるのはいいんだが、なんでこんなにピンぼけしてる気がするんだろう?作者が萌えていないような気がするからか? うーん、この人はよろず物書き屋としては非常にプロフェッショナルだと思うんだが、上手い下手よりも中高生のパッションとリビドーにどけだけ訴えかけるかが必要なラノベには向いてないんじゃないか? 二昔以上前、SFが盛況の時代なら需要はいくらでもあったんだろうが、はて今はどうしたものか。 小起用さを生かして、ホラーかミステリーで一発当ててファン層を広げてみたりしたらどうなんだろうか? あるいは漫画原作とか。才能の使い方と場所を間違えてるよなー。 まあ、大きなお世話ですがね。 (08/5/31) |