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原田宗典

タイトル評価一言メモ
何者でもないうなぎ舞台に携わっているものしか書けない役者独特の苦悩
うな





  何者でもない  うなぎ

何者でもない (講談社文庫)
原田 宗典
講談社





短編集。
劇団二十一世紀少年で奴隷と呼ばれる下っ端を務める貧乏青年ショウジショウイチがでくわした、劇団ならではの出来事をつづった作品。

★『クスコの引越し』
いつの間にかいなくなっていた同期の女性からの久しぶりの電話。
用件は引越しを手伝ってほしいという


★『何者でもない』
劇団の看板男優の様子が最近おかしい。
ロバートロバートと独り言をつぶやき、そして失踪した。
演出家に命令され彼を探し始めるのだが……


★『一人芝居』
新しい後輩は、人懐こく華のある男。だが、彼には手癖が悪く虚言癖があった。
そんな後輩がショウイチが昔つきあっていた女とつきあいだしたのだが……

以上三篇収録。


切ないなあ、これ切ない。
自身も劇団に深く関係しているだけあって、貧困に耐えながら、舞台の上にある「なにか」を手に入れようとあがいている若者の描写が切なくリアリティがある。
バイトをしているたこ焼き屋だとか、貢ぎ貢がれの乱れた男女関係だとか、傲慢だが実は気弱な演出家だとか、ありとあらゆるところに、人間の臭いがある。

三篇、どれも胸に来るいじましい話だが、表題作でもある『何者でもない』は特にいい。
女遊びが派手で「役者だからロクデナシでしょうがないんだよ」と笑う男の、突然の乱心。
誰も知らない本名。意外な実年齢。家族構成。知れば知るほど、スポットライトの下で輝いていた男が、まさしく何者でもなかったことが暴かれていく展開が見事。ゾッとするし、悲しくなるし、胸が締め付けられる。

(07/12/21)










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